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第5話

「お、アズサくん! 今日も早いね!」 「園田さん。おはようございます」 「おはようございます」 「じゃあ鳴海さん、俺はこれで」  顔なじみのカペラレコードのスタッフが訪れ、アズサは怜にちいさく手を振りながら園田と連れ立ってエレベーターへと向かう。ほほ笑んで見送り、怜はふうと細く息を吐く。  人と接するのが苦手になった決定打は、年月が経ったところで怜の胸に大きくしこりを残している。誰しもが元恋人のように他人を陥れるわけじゃない、分かっている。  けれど、この人はそうじゃないと判断する材料は上辺の関係ではひとつもないに等しいのだ。  アズサより長年の付き合いである園田相手にすら身構えた体から力を抜き、気合を入れ直す。今日も業務がたくさんある。

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