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ワンダーダンサー「ego」 3
少し歩いたところにあるドン・キホーテで手頃な値段の黒縁の伊達眼鏡を購入し、理玖はすぐにかけた。それと同時に一樹が渋谷に着いたと連絡が入り、2人はJRの改札に向かう。
その途中、ビルの隙間のような場所で典型的なカツアゲを目撃する。
チンピラ紛いの男2人に1人のブレザーを着た少年が何やら追い詰められている。
「あ」
理玖は何かに気が付き、自身の危険や状況を考えるより先に歩みだしていた。
「すんません、俺のツレに何か用っすか?」
「あ? んだテメー」
理玖は少年と男たちの間に割り入り、1人の男が殴ろうとした腕を掴みギリギリと痛みつけるように力を入れる。
もう1人の男が理玖に殴ろうとした瞬間「お巡りさん! こっちです!」と誰かが叫んで、2人の男は舌打ちをしながら逃げていった。
力が抜けた少年は倒れ掛かって理玖が咄嗟に抱き留める。
「りっくん! ちょっと何してんの⁉ 危ないじゃん!」
「あー…さっきの鈴野だろ? サンキューな。流石に2人相手じゃボコられてたわ」
「ホントそれな! …で、その子は…? 知り合いとか?」
唯は胸を撫でおろし、理玖の腕の中にいる少年を指した。
「まぁ、な……えっと…大丈夫? 帆乃、くん?」
理玖の腕の中で少年、帆乃は自分の名前を呼ばれて安心したのか、涙をこぼしてしまう。理玖に対して返事はできない。
「おーい、理玖、鈴野、何して……んのォ⁉」
呑気にやって来た一樹は目の前の状況に大げさに驚いた。すると唯が一樹に近寄り「おっせんだよ! バカズキング!」と怒って腹パンをする。
「鈴野、とりあえずファミレス無し。どこか静かに過ごせるとこ、探してくれ」
「ならカラオケがいいかもね。先にカズキングと探してる」
「悪いな」
「それと遅れたカズキングはハニトー奢りな」
「いや、俺ちょっと遅れるってメッセ飛ばしたし!」
「だまらっしゃい! りっくんはその子のことよろしく、場所とれたら電話する」
「頼んだ。帆乃くん、俺に掴まってていいから、ゆっくり歩ける?」
理玖が優しく問いかけると帆乃は小さく頷いた。
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