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第2話
「もうすぐバレンタインだよ♡」
「……」
希望は運転中のライに、にこにこしながら伝えた。
ライは希望を横目で一瞥して、すぐに視線を前に戻す。
希望は心配だった。
ライがバレンタインを覚えていれば、希望にチョコをくれるだろう。なぜならライは希望のことを愛しているからだ。
そりゃもう、すごく、愛しているはずだ。誰にも渡さない、なんて言ってくれるのだから相当の愛だろう。時々怖くなるくらいだ。その重みと深さを、希望はよくわかっていた。
だから、ライの、希望への愛に関しては信頼している。おれは愛されている。おれもライさんが大好き。両想いなのだ。なんて素晴らしい。
ありがとう、母さん父さん。おれをライさん好みの魅力的なかわいこちゃんに産んでくれて。
しかし、それでも希望は少し不安だった。
いくらライが希望を愛していても、ライは世間のイベントに疎いところがある。本当に今まで、心の底から興味がなかったんだろう。まったく困った人だ。そんなところも好き。
そんな困ったライさんなので、希望は少しだけ「この人バレンタインが近いこと、わかってるかなぁ?」と不安になった。
当日になって「あっ……」なんてことになったら可哀想だ。おれが。こんなに楽しみにしているのに。
ライさんだって、うっかり忘れてて、当日おれにチョコを渡せないなんてことになったら、悲しむに違いない。きっと。たぶん。……うん、それはないな。
とにかくライさんにバレンタインが近いことを主張しておかなければならない、と希望は強く思った。
希望が渡す側になることが多いから、今年はもらいますよ、受け入れますよ、という気持ちを示さなければならない。
「ください!」と強請るような真似をするのはさすがにちょっと恥ずかしいから、ここはそれとなく、かつ、しっかりと伝えなければ。
あと、食べたいチョコの種類とブランドも。
たくさんあるので、ライさんが迷ってしまったら大変だ。
それとなく、さりげなく伝えるのだ。
希望はにこにこしながら話を続けた。
「メルティーフのバレンタイン限定パッケージのチョコ可愛いんだよ♡
あと、ドルガーナのホワイト生チョコ今年も出るんだって♡ 新しいのだと、ロッティアのフルーツシリーズと、バルテノンの日本酒とワインのチョコとか気になってて」
「へえそう」
「……あ、あとでチョコ博展のリスト送るね!」
「いらない」
「あう……かわいいのいっぱいあるから……人気ブランドばっかりだし、予約もあって」
「いらない」
「……」
希望はそっと、リストを送りつけた。
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