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scene15-04 ★

 言って、雅の筋肉質な胸板に両手を当てて腰を上げる。再び腰を沈めれば、ゾクリと静かな快感が背筋を駆けた。 「んっ、ぁ……」  衝動に突き動かされるまま、不器用に腰を揺すっていく。  ところが、なかなか良いところに当たらず、だんだんもどかしい気持ちになってくる。  もっと欲しい、とすっかり欲情しきった体は強い快感を求めていた。どうしたらいいか困っていると、口元を綻ばせながら雅が腰を掴んでくる。 「物足りないんじゃないんですか?」 「はあ!? ち、違ぇーし!」 「これじゃあ、いつまで経ってもこのままですよ?」 「テメェ……俺が下手クソみてぇに言うんじゃ――、ッ、あぁっ!」  言葉の途中で下から大きく突き上げられて、玲央の体がビクンッと飛び跳ねる。思わぬ快感に視界がぐらぐらとした。 「あ、うっ! 人の話を、っ、あ! ぅあぁッ……」  ベッドのスプリングを利用して、雅は腰を上下に揺らす。  強弱をつけながら感じやすい場所を集中的に突かれて、蕩けそうなくらいに頭の感覚が甘く麻痺していく。 「やめっ……そこ、や……ん、ぅっ」 「嫌じゃないくせに。欲しいって、玲央さんのここはずーっと言ってましたよ?」 「だからって、そこばっか……あ、ンっ!」  ずっと求めていた刺激に息を弾ませて喘ぐ。  スプリングの軋み、グチュグチュという水音、そして雅の意地悪な言葉づかい……そのどれもが快感を煽って、まだ穏やかな責め立てだというのに玲央の腰が震えだす。 「や、だめ、も……だ、だめだってのっ」 「いいですよ、可愛くイッちゃってください」 「ひ、あっ! これ、なんか違ッ……ん、ああぁあッ!」  いつもと違う感覚に、瞼を強く閉じて歯を食いしばるも、耐え切れずに絶頂を迎える。  瞼の裏に閃光が走ったかと思うと、続けて体を突き抜けるほどの快感が駆け抜けて、ガクガクと痙攣を繰り返した。  だというのに、自身は熱く昂ったままで欲望を吐き出すことはない。体が痙攣しっぱなしで絶頂感から抜け出せず、呆然としながら雅の体に向かって崩れ落ちた。 「あれ? 出さずにイッちゃいましたか?」雅が背に腕を回してくる。「こんなに震えちゃって可愛い……玲央さんの体、ますますエッチになってますね」  背中を撫でられれば、それだけでビクビクと体が反応を示し、続けざまに襲ってくる快感の波に泣きじゃくるしかなかった。 「ぁ……みや、び……っ、苦し、イキたい……ッ」 「もうずっとイッてるんじゃないんですか? ここ、ぎゅってしっぱなしですよ?」  雅が微笑みながら腰を持ち上げてくる。そして抵抗する間もなく、無情にも抉るように性感帯を穿ってきたのだった。 「うあッ! や、あっ、ああぁっ……!」  突き上げられるたびに泣き叫ぶような嬌声が喉をついて、途方もない快楽に溺れていく。  当然のことだが、このエセ草食系男子に自制心などというものはなく、玲央は夜が更けるまで揺さぶられるしかなかった。     ◇  翌朝、心地よい温もりを感じながら目を覚ました。  目の前にあるのは、愛しい恋人の寝顔。男二人が狭いシングルベッドで寝るとなると、どうしても抱きかかえられる形になってしまう。  窮屈なことこの上ないが、朝起きて一番に目にするのが恋人の顔というのは、なかなかに悪くない。むしろ幸せさえ感じてしまうのは、相当惚れこんでいる証だろう。  同棲し始めたら、これがいつものことになるのかと想像してみる。いつかは慣れて当たり前の光景になるのだろうが、根源にある気持ちはずっと変わらないはずだ。 (けどムカつく……人畜無害な顔して寝やがって。あんなにすんなら、ゴムも渡せばよかった)  昨夜は散々だった。いつの間にか気を失っていてよく覚えていないが、滅茶苦茶に抱かれた記憶がある。  体は綺麗になっているし着替えもなされているしで、雅の誠実さがうかがえるのだが、何かしらのスイッチが入った彼はどうにかならないものか。  本当に困った後輩だと思いつつ、本人が寝ているのをいいことに顔を見つめる。  端正な顔立ちをしていると前々から思っていたけれども、改めて見れば、どう考えても世の女性が好むような美男子である。飾り気がなくとも確固としたナチュラルな美しさがあった。 (だからって、他のヤツにはぜってーやらねーけど。もうコイツは俺様のだし)  愛おしい気持ちを乗せて、起こさないように軽くキスしたつもりだったのだが、 「おはようございます」  雅の瞼がうっすら開いて、優しい声色で囁かれたのだった。 「なっ!?」 「あは、幸せな気分いっぱいで起きちゃいました」 「嘘だ! 前から起きてただろ!?」  ジタバタと暴れるも、すぐに胸に引き寄せられて、身動きなど取れなくなってしまう。ぎゅうっと力強く抱きしめられては、大人しくなるしかなかった。 「嬉しいな。これからは一緒の朝を迎えられるなんて」  どうやら同じことを考えていたらしいが、何故こんなにも思考が被ってしまうのだろうか。最近は特に多い気がしてならない。 「お部屋探して、引っ越し準備して、一緒に住むにあたってルールとか決めて……恋人感あってドキドキしますね」  そのような言葉とともに額にキスされた。頬、首筋、鎖骨と少しずつ下へ対象が変わっていって、くすぐったさに身をよじらせる。  かと思えば、シャツの中に手が忍び込んできて、玲央の目が驚きで見開かれるのだった。 「おいコラ、朝だぞ!?」 「え? 今日はスケジュール入ってませんでしたよね? ちょっと触るくらい……」 「いやいやいや! 昨日あんだけしただろ!?」 「俺はいくらだってしたいな」 「バッ! 触んなっ、ドスケベ野郎!」  胸元に触れてくる雅の手をどけようとする。  だが、無理なものは無理だった。雅は楽しげにクスクス笑いながら口を開く。 「1LDKにするなら、大きいダブルベッドにしましょうか。いつもこうだと困っちゃいますもんね」 「あ、あのさっ! 自制って言葉知ってる!?」 「すみません。玲央さんが可愛くて無理です」 「こっ、ここ、このエセ草食系野郎ーッ!」  力では敵わなくとも、悪態をついて抵抗の意思を見せる。  しかし、耳元で愛の告白なんてものを受ければ、それもすぐ失せてしまい、二人の熱い吐息が朝から交わることになるのだった。

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