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scene18-05 ★
「動ける?」
「ん、やってみる」
と、誠がぎこちなく腰を上下に揺すり始める。一瞬にして、場の空気が変わったのを感じた。
「くっ……ん、ぅ」
「ゆっくりでいいから」
「ん……」
繋がり合った部分を、このような体勢で見るのは初めてだ。自身が誠の体内に出入りするさまに、言い表せないほどの興奮を覚えた。
緩やかな動きでも、絡みついてくる粘膜の感覚が気持ちよく、呆気なく達してしまいそうになるのを堪えながら見守る。
「あ、あぁっ」
敏感な箇所を見つけたのか、甘ったるい声が誠の口から零れた。
動きにも少しずつ慣れてきたようだ。快感を求めるように、夢中になって腰を振る様子が見て取れた。
「んっ……あ、ぁンっ」
腰から太腿にかけて撫でてやると、誠は体をビクビクと震わせながら、とろんとした目を向けてくる。
口はだらしなく開いたままで、唾液が糸を引いており、精液も未だに頭や顔にべっとりと残っていた。
刺激の強い艶めかしい光景を前にして、もう黙ってなどいられなかった。
「手持ち無沙汰だな」
耐えかねて、先ほどからずっと腹部に叩きつけられていた誠の屹立を握り込む。
先端はとろとろと蜜を溢れさせている。強弱をつけて扱いてやれば、すぐに反応が返ってきた。
「うぁ、待っ、ぁ……やあぁっ」
「こっちはどうした?」
意地の悪い言葉を投げかけながら、もう片方の手で尻臀を撫でる。
前への刺激で、動くどころではないのは承知のうえだ。何のリアクションも待たず、渾身の力を込めて一番敏感な箇所を突き上げてやった。
「ああぁあッ!」
誠が体勢を崩して倒れかかってくる。
内壁がきゅうきゅうと収縮するのとともに、腹の上に熱い体液が伝っていくのを感じた。
「ぁ……あぁ、あ……」
全身を痙攣させて絶頂を味わっているところを、優しく抱きしめる。
(本当に可愛すぎる)
もう我慢できない。抑えが利かなくなって、箍が外れたように腰を叩きつけた。
「ひあッ! や、あっ、まだイッてる、のにっ――あぁッ」
もはや主導権はこちらのものだった。
誠の体が跳ねて結合が解かれそうになれば、抱きしめる腕を腰の方に持っていき、何度も激しい抽挿を繰り返す。
荒々しく自身を穿つたびにベッドが軋み、互いの交じり合う吐息や、激しく肌のぶつかる音も相まって、ますます気分は高揚していく。
「好きだよ、誠」
言葉にするたび、喜ぶように誠がきつく締めつけてくる。思わず声が漏れてしまいそうな快感に息を詰めながら、律動を急速に速めて互いを高めていった。
「あ、あぁっ、俺も好き……だいすきっ」
誠が口を開き、舌を出してくる。応えるように視線も舌も絡ませて、貪るように濃厚なキスを交わした。
「ん、んぅ、きもち、よすぎちゃうっ――またイキそお……ッ!」
「いいよ、一緒に」
がむしゃらに腰を叩きつけて、高みへと昇り詰めていった。
痺れるような快感が体中を駆け巡って、熱が下腹部に集まるのを感じる。限界はすぐそこだった。
「あっ、ああぁあっ!」
最奥に己の欲望を注ぎ込むのと同時に、誠の背が大きく弓なりにしなった。熱い飛沫が再び腹部に伝っていく。
「ぁ、すご……大樹の、まだでてる……」
ぼんやりとした表情で呟きながら、誠が身を預けてくる。すると今度は、その体内から漏れ出た白濁が、じわりと下半身を濡らした。
「うへぇ、どろどろだあ~」
「これは風呂に直行だな」
苦笑いを交わす。くすぐったい気恥ずかしさがあって、胸がむずむずとした。
風呂に入って汚れを落としたあと、誠に腕枕をしてやりながらベッドに横たわる。
行為後のクールダウンに「気持ちよかった」「幸せだ」などと、ムードのある会話の一つや二つしたいものだが……、
「決めた。俺も少しくらい家事する」
誠の柔らかなくせ毛を愛でていたら、そんなことを言われた。
「よそはよそ、うちはうち」
母親のように返すと、誠は「そうじゃなくて」と顔をグイッと寄せてくる。
「だって、試験勉強大変だろ? 少しでも負担減ったらいいなって」
「別に俺は」
「考えなおしたんだけどさ。俺も大樹のために、もっとできることないかな~って思ったんだ。嫌われたくないとかじゃなくて、好きだから何かしてやりたい――これじゃ駄目?」
「誠……」
誠の存在に、自分がどれだけ救われているか。あの言葉は少しも飾らぬ本心だ。
自分でもどうかと思うのだが、溺愛していると言っても過言ではない。
今こうして隣にいられるだけでも、奇跡のように感じられて、日々満たされているというのに――このバカには一生敵わないに違いない。
「……お前が言うなら、ある程度は当番制にしてもいいかもな」
言って、ありがとうの代わりにキスをする。
彼が与えてくれる幸せに、また頬が緩むのを感じたのだった。
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