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おまけSS 珍しいお出迎え

 玲央が夕食の支度をしようと思い立ったところ、ガチャリと玄関のドアが開き、続けて同棲相手である雅の声が聞こえてきた。 「玲央さん、ただいまです」 「おかえり……ってオイ」  顔を覗かせたところを、ぎゅっと抱きしめられる。 「えへへ、玲央さんにお出迎えしてもらえるなんて新鮮だ」  見なくても、雅が嬉しそうに笑っているのがわかった。 (ま、こういうのもいいよな)  今日は、先方の都合で午後のスケジュールが空いたため、いっそのことオフにして休息をとることにしたのだ。  たまには素直になって抱きしめ返す。すると雅は笑って、肩に顔をうずめてきた。 「あれ? お風呂入ったんですか?」  言って、すんすんと鼻を鳴らす。まるで大型犬のようだった。 「いや確かに入ったけど……いちいち嗅ぐなよ」 「あは、体洗って待っててくれたんだ」  直接的な言葉に玲央の心臓が飛び跳ねた。 「は!? バ、バカッ! 変な言い方すんな、変態野郎!」  咄嗟に身を離して距離を取る。  確かに彼の言うとおり――でなければ、己の秘所まで洗浄するようなことはしない――ではあるのだが、正直に答えるわけにはいかなかった。 「あ、汗かいてたしっ、先にシャワー浴びたくなっただけだっての!」 「へえ、そうですか」 「なに笑ってんだよっ」 「今日も玲央さんが可愛いなあ~って」  雅がにっこりと微笑む。毎度のことながら、こちらの考えなんて全部見透かしているのだろう。 「そーゆートコがマジでムカつく!」  胸倉を掴んで顔を睨みつける。  もちろん、そのようなことで動じる雅ではない。それどころか、ちゅっと軽く音を立てて唇を重ねてきた。 「ななっ」  ますます顔が熱くなって何も言い返せなくなる。この生意気な後輩には、いつだってペースを乱されまくりだ。 「やっぱり駄目。もう我慢できません」  雅は顎を掴んできて、 「好き……大好き、玲央さん」  そう繰り返しては、キスの雨を降らせてくる。  最初は啄むような甘ったるい口づけだったが、次第に舌同士を絡めるような濃厚なものになっていった。 「玲央さんってば、もう顔がとろんってしてる」 「っ、ばか……」  欲求不満とまではいかないが、玲央だって日々の忙しさに溜まっているものはある。このようなことをされて、何も感じないわけがない。 「ね、玲央さん――しよ?」  情欲に満ちた瞳を向けられる。  気づけば、壁に追いやられて逃げ場なんてなかった。返事をする間もなく、シャツのボタンが外されて素肌が晒されていく。 「おいコラ、ここ玄関っ」 「俺はどこだっていいです」 「ま、まだメシ食ってねーし」 「先に玲央さんを食べちゃいたいです」  鎖骨が露わになれば、やんわりと歯を立てられて甘い痺れが走った。 「ッ……お前、性欲強すぎっ」 「そんなことないですよ。玲央さんが好きすぎて、したくなっちゃうだけです」  それに、と雅は耳元で囁く。 「玲央さんだって、何だかんだ言って期待してるでしょ?」 (……クソ生意気なヤツ)  もとより拒む気なんてない。玲央はされるがままに身を任せるのだった。

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