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獣人⑤
だが、その期待とは裏腹にノイルの口からは残酷な答えが返ってくる。
「残念だが、帰りカタは知らナイ。
おれが日本を知ってるのはお前と同じようにコチラに来た日本人がいたからだ。
コトバはその者から教わった」
昔、ケイと同じようにこの異世界に飛ばされた日本人の男性がいたと言う。
しかし、その男性は日本に帰る事が出来ずこの世界で亡くなったそうだ。
「そ…んな……」
帰れない……。
その事実が頭を殴られたようにケイに絶望を与える。
明らかに曇った顔をするケイにノイルは複雑な表情を浮かべ、何か言いたそうに口を開く。
「ケイ、帰れなくともこのセカイで暮らせばいい。
それにお前は……」
続きを言いかけたその時だった。
この部屋のドアがトントンとノックされた。
ノイルは言いかけた言葉を飲み込み、獣人の言葉で何か言った後に先程ケイを連れていった狐が現れた。
「*******」
「……******!?」
全く何を話しているのか分からないケイだが、何やら深刻そうではある。
だがそんなことは最早どうでもよかった。
もう帰れないのならいっそ死んでしまいたいとすら思っていた。
こんな訳の分からない所で一生を終えたくない。
本来なら美大で絵の勉強を続けている筈だった。
元々絵を描くのが好きで、小さい頃から暇さえあればずっと絵を描いていた。
もっと上手くなりたいと大学で色々と勉強し、ゆくゆくはそれを仕事にしたかった。
今はそれが出来ないどころか両親や友人にすら会えないのだ。
感傷に浸っているとノイルがケイへと目を向ける。
「少しソトで話してくる。
お前はココにいろ」
そう言うと狐と部屋を出て行った。
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