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第1章 reverse~逆~
11月中旬の朝、皆寒くて体を震わせる。
天気予報では今日から本格的に冬が始まるらしい。昨日がそこまで寒くなかったからか厚着をせずに来た女子達がストーブの前で「冬ってきらーい」と叫んでいた。
…僕は好きなんだけどなぁ、冬。
確かに、寒くて凍えそうになるけど、冬のツーンとした匂いや雪の降る景色、家に帰った時の温かさとか…なんだかほっとする。
とは言っても、寒いのに強いわけでないから毎年体調を崩してしまうんだけどね…
なんて、誰も興味無いであろう説明に少し自虐的になりつつ鞄から教科書を取り出していると
「あっ、夏喜 くんだ!おーい、おはよう!」
胸がドキンと鳴る
「え、どこどこ!キャーやっぱかっこいい!!」
さっきまでストーブを占領していた女子達が窓の方へ集まる
「っていうか、夏喜くんめっちゃ厚着じゃない?(笑)」
「あれ?知らないの、夏喜くんちょー冬苦手なんだよ」
「へぇ〜寒がりなんだ!なんかかわいい♡」
僕も窓の外をそっと覗く
…確かにびっくりするほどの厚着だ。
コートは何着も着ているからか分厚くなってるし、マフラーは何重にも巻かれている。覗かせている綺麗な目もいつもより細くなっていた。
女子がかわいいと言うのも分かる…なんだか雪だるまみたいだ。
思わず笑いそうになるのを抑え、分厚い眼鏡をクイッと上げると僕は再び鞄から教科書を取り出した。
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