お疲れ様…… 乱れていた呼吸はマシになり、汗も徐々に引いてきた。 見知らぬ誰かからのメッセージをじっと見つめる、…てっきりこの図鑑は忘れ物だと思い込んでいたが、違うのだろうか。 丸っこくて可愛らしい字…… もちろん、僕には｢お疲れ様｣なんて言ってくれる友達はいない。 そう考えると、これは杉山先生か斎野先生からのプレゼント？ いや、杉山先生の字体はもっと濃くて男らしい字だった気がするし、斎野先生なら僕に直接会って渡すだろう。 なら、一体… ブワッ ｢………っ｣ 夏の暖かい風が吹き抜ける。 (……やっぱり) やっぱり夏は嫌いだ。 暖かい風のせいで考えることさえも面倒くさくなってしまうから。 けど、それよりも暖かい言葉の方が僕は苦手だ。 胸の奥がギュッと苦しくなるから。