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気になって本のある方へそっと近づく。
近くで見てみると、何冊にも重なっていた本は全て図鑑だった。
誰かが忘れて帰ったのかと思いつつ、コスモスのページ開けてみると
「………分かりやすい」
僕が借りてきた図鑑よりも丁寧に内容が書かれ、細かなコツまで示されている。
表紙を改めて見てみるとガーデニング初心者用と書かれていた。
(一体誰が忘れて…)
持ち主の名がどこかに書いてないかページをペラペラとめくってみる。
…それにしても分かりやすい図鑑だ。
この1冊さえあればどんなお花でも植えられそうなぐらい、どのページにもコスモス同様で丁寧な説明と細かなコツが書かれてある。
ふとあるページで手が止まった。
……サザンカだ。
« 冬麻… »
急にかつての記憶が蘇りそうになる、頭がガンガンと鳴り響く
« ……って知って… »
思い出すな、思い出すな……と自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど身体中にさぶいぼがたつ。
« ……その…だよ »
嫌だ…
そう強く思った時だった。
ヒラッ
足元に紙切れが落ちる。
はぁはぁ………
暑さとは違う、冷汗が頬を伝った。
(な、なんの紙だろ……)
乱れる呼吸を整えながら下に落ちた紙切れを拾う。
そこには
(お疲れ様)
の一言が書かれていた。
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