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第8章 fast approach ~急接近~
朝、いつものように学校に着き、いつものように中庭へ向かう。
「寒い……」
唯一、いつもと違うのは雪が積もっている事だ。
昨日の夜、大雪が突然降り出したらしく、朝のニュースで大きく取り上げられていた。
……とは言っても色々なことがあり、疲れてぐっすり眠っていた僕は、大雪にも気づいていないので、朝の光景にびっくりしていた。
(今年の初雪が、こんなに積もるなんて…)
ニュースキャスターの人も、天気予報士も度肝を抜かれていた。
「……河木くん、大丈夫かな」
比較的暖かいと言われていた今年の冬でさえ、「寒いすぎて死ぬ!」と豪語していたのに…突然気温が一気に下がり、こんな大雪の中登校してくるなんて……
(本当に死なないだろうか…)
早く教室に入ってて欲しいなぁ…なんて心の中で密かに願う。
今日の寒さによる風邪で河木くんが休むなどしたら…心配でいっぱいになってしまうだろう。
周りからの視線に怯える心配は無くなるが、好きな人が体調不良になるのは嬉しいはずがない。
朝にやろうとしていた雪かきもあまりの寒さに昼休みへ回そうと思っていた、その時だった。
「は、…羽野!」
いつかの日…いや、自分が思っているよりも最近聞いた、同じようなフレーズに、声に、シチュエーションに…後ろを振り向いた。
「か、河木…くん」
そこには寒さに震えて立っている、河木くんがいた。
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