(夏喜side) 羽野は案外分かりやすい。 眼鏡や前髪で一見ポーカーフェイスに見られがちだが、よくよく見てみると表情豊かだ。 (嘘をつけないなんて、可愛いなぁ) あまりの素直さに自然とそう思ってしまう。 きっと羽野はまたマイナスの方へ考えてしまっているのだろう。そう考えたら少しだけ不安だ。 羽野の気持ちが分かるようになりたい。そうすれば、俺の中の不安も少しは消えてくれるのに… 夏の草むしり大会で倒れた羽野を抱き抱えた時、あまりの軽さに衝撃を覚えたのを思い出す。 (ちゃんの食べれてんのかな…) まるで女の子を抱えてるかのような、華奢で細い体に不安でいっぱいになった。 …そういえば、その時からだった…羽野のことを強く気にかけるようになったのは。 自己紹介の時から何故か気になってはいたが、話しかけようとかは思わない。 クラスメイトの1人としか考えてなかった。 けれど、抱き抱えたあの時から、俺の中で羽野が気になる存在になって、知れば知るほど気になって…、 仲良くなりたいとまで思うようになった… (パンしか食べたとこ見たことないな…) 中庭で羽野を見ていた時も、一緒にご飯を食べ始めてからも…羽野がお弁当を持っている姿を見たことは無い。 いつも、パン2つだけ持っていた。 (そりゃ、倒れるよ…) 目の前のベットで座る羽野を見ながら また、不安な気持ちが俺の中で募っていった。