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「あ、あの…斎野…先生は…?」
抱きついていた腕を離し、小さく伸びをした河木くんに声をかける。
「ん?あぁ!確か、この後出張だとかで先に帰っていったよ」
「……え!」
ということは、ずっと河木くんと2人きりだったって…こと?
(ダメだ…なんか、色々ありすぎて頭がパンクしそう…)
「そういえば、大丈夫?」
「…え?」
「突然倒れたから…」
……そうだ、色々ありすぎて忘れかけていたけれど、僕…倒れたんだった。
「だ、大丈夫…です……少しだけ、つ…疲れてたの…かも………」
さすがに本当のことは言えずに河木くんに嘘をついた。
嘘をつくことは心苦しい、できるだけつきたくはないが本当のことを言う方が…辛い。
「……嘘でしょ?」
「…っ!?」
河木くんの言葉に目を見開く。
それに気づいているのかいないのか…河木くんは小さく笑うとそのまま僕の顔をじっと見つめた。
「言いたくなかったら言わなくていいよ?けど、嘘はつかないで?…羽野、ものすごく分かりやすいから、つけきれてないんだもん(笑)」
思わず顔を逸らしそうになる。
(申し訳ない…)
嘘をつくのは誰よりも下手だ。
それは、中学の時から変わらない。
だから、正直に生きてきた、誤魔化すことはあっても、さっきみたいなあからさまな嘘はつかないように。
「別に嘘つくことを悪いとは言ってないよ?ただ、あまりにも分かりやすいから…(笑)だったら言いたくないってハッキリ言って欲しいな」
河木くんはニコニコと僕の顔を見ながら微笑む。
(まただ…)
また、甘い雰囲気が流れ出す。
前にもこんなことがあったが…どうやら2人きりになると河木くんが自然とそういう効果?みたいなのを発揮するらしい。
(苦手だ…)
甘い雰囲気はやはり慣れない、それが河木くんだからなのか、違うのかは分からないが…
むず痒くなってどうしたらいいのか分からなくなってしまう。
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