276 / 437

┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈

「は、羽野?」 「え、あ、…だ大丈夫…だから、ほんとに…」 「……なら、良いけど」 僕から目線を前に戻し、少しだけ気に食わなそうに口を尖らせる。 (癖…なのかな?) 河木くんの表情はいつも素直で豊かだけど、拗ねてる?時の表情は特に分かりやすい。 いつもカッコよくてスマートなのに、口を尖らせる行動は可愛さが何割も増しちゃうんだ。 「あ、な…何で河木くんが?」 ふと気になったことを聞いてみる。 もしかしたら、解散する時に言っていたのかもしれないが、何故河木くんが僕と一緒に帰っているのか… (てっきり、涼と一緒に帰るもんかと…) 「…何?涼さんが良いわけ?」 「え、そ…そんなこと!」 慌てて首を振りながら否定すると、河木くんが上目遣い気味に僕の顔をチラッと見る。 (あ、まだ尖ったままだ…) 可愛いなんて言ったら、怒られちゃうかな… 「…何で俺なの?」 「……へ?」 唐突な質問に足が止まってしまう。 河木くんも僕に合わせて、足を止めた。 「いや、…何で俺なんかの事好きなのかなぁって…もっと良い奴いるじゃん」 河木くんより…良い人? 「……考えたことない…」 「え?」 「河木くんより…良い人なんて……考えたこと、ない…」 僕にとったら河木くん以上の人なんて、きっと…この世に存在しないんだ。 大切だと思う人はいても…河木くんを超える人なんて… 「そんな、俺いい所ないでしょ?好きになる所なんて見つかんないと思うけど…」 ……この人は、どこまで鈍感なんだ…… 河木くんに思いを寄せる人なんて、僕だけじゃないに決まってる。 「全部」 「…え?」 「…僕は、河木くんの……全部が、好き…だよ」

ともだちにシェアしよう!