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┈┈┈┈❁⃘┈┈┈┈
「は、羽野?」
「え、あ、…だ大丈夫…だから、ほんとに…」
「……なら、良いけど」
僕から目線を前に戻し、少しだけ気に食わなそうに口を尖らせる。
(癖…なのかな?)
河木くんの表情はいつも素直で豊かだけど、拗ねてる?時の表情は特に分かりやすい。
いつもカッコよくてスマートなのに、口を尖らせる行動は可愛さが何割も増しちゃうんだ。
「あ、な…何で河木くんが?」
ふと気になったことを聞いてみる。
もしかしたら、解散する時に言っていたのかもしれないが、何故河木くんが僕と一緒に帰っているのか…
(てっきり、涼と一緒に帰るもんかと…)
「…何?涼さんが良いわけ?」
「え、そ…そんなこと!」
慌てて首を振りながら否定すると、河木くんが上目遣い気味に僕の顔をチラッと見る。
(あ、まだ尖ったままだ…)
可愛いなんて言ったら、怒られちゃうかな…
「…何で俺なの?」
「……へ?」
唐突な質問に足が止まってしまう。
河木くんも僕に合わせて、足を止めた。
「いや、…何で俺なんかの事好きなのかなぁって…もっと良い奴いるじゃん」
河木くんより…良い人?
「……考えたことない…」
「え?」
「河木くんより…良い人なんて……考えたこと、ない…」
僕にとったら河木くん以上の人なんて、きっと…この世に存在しないんだ。
大切だと思う人はいても…河木くんを超える人なんて…
「そんな、俺いい所ないでしょ?好きになる所なんて見つかんないと思うけど…」
……この人は、どこまで鈍感なんだ……
河木くんに思いを寄せる人なんて、僕だけじゃないに決まってる。
「全部」
「…え?」
「…僕は、河木くんの……全部が、好き…だよ」
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