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クリスマスを向かえるまでの数日間。 特に誰かと出会うこともなく、たまに涼と電話をしながら勉強したりなどそこまで変わらない日々を過ごしていた。 そうこうしているうちに、今日はなんと12月23日。 『明日だな、クリスマスデート』 「う、…うん」 『ずっと、思ってたんだけど、明日クリスマスじゃなくてクリスマスイブじゃね?』 「そ、……それは…そう…」 涼の正直、どうでもいいような情報?も右から左へ流れていく。 『……冬麻?』 (や、…ヤバい…これは、思ってる以上に……) 『まさかだけど、緊張してる?』 ドキンッ 「な、ななな…な…!」 『図星かよ(笑)』 涼のお腹を抱えたような笑い声に少しだけムッとしてしまう。 『あれ?次は怒ってんの?』 「な、…何で分かんの!?」 『え、雰囲気?』 (……恐るべし……) 相変わらずこういう空気を読み取るのに敏感な涼は、僕の気持ちなんか一瞬にして分かってしまう。 (涼は敵に回したくないタイプだ…) 今まで思ったことなかったが、ふとそんな事が頭に浮かんだ。 「…あ、涼は?…クリスマスどうすんの?」 中三のクリスマスは知らないけど、中一と中二のクリスマスは僕と一緒に過ごしていた。 とは言っても、僕があの家にずっといるのが嫌で、涼のアトリエに避難していたようなもんだったんだけどね。 そんな事もあり、中学時代の二年間、クリスマスは涼と一緒だ。 『あぁ〜、今年もアトリエで作品作りかなぁ』 「…大変だね……」 『ん?まぁ、どうせ暇だし。クリスマスとか興味ねぇもん』 確かに、中学の二年間は一緒に過ごしたとは言うもののただ“過ごした ”だけで、クリスマスらしいことは一つもしてない。 『それに、やりたくてやってるだけだから苦じゃねぇもん』 涼の少しだけ柔らかくなった声に心がホッと温まる。 (…やっぱ、かっこいいな…) 河木くんに対する「かっこいい」とは、また違う「かっこいい」。 やはり、この人は昔っから大好きで憧れていた“紅月 涼 ”なんだ、なんて… ふと、思ってしまっていた。

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