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『とにかく、明日は頑張れよ』 「う…うん」 『王子様をものにすんだろ?』 「も、ものって…」 「そんなんじゃない」そう言いかけて、ふと風隼さんの言葉が頭をよぎる。 『夏喜他の奴に取られちゃうよ!?』 (そ、そうだよね…河木くんに甘えてばっかりじゃ、呆れられちゃう…!) 「うん、…ものにする…」 『は!?』 「が、頑張って、も…ものにする!」 そう言い切った途端、僕と涼の間に長い沈黙が流れる。 (…あれ、なんか…めっちゃ恥ずかしいこと言ってない!?) いくら、河木くんを取られたくないからと言って、涼に…中学からの親友に正々堂々と言い放つ言葉じゃなかった! 「い、いや…あの…『いいじゃん』 「へ?」 『今の冬麻、すっげぇ冬麻っぽかった』 僕…っぽい? 『うん、やっぱ羽野 冬麻は自信家で正々堂々としてなきゃな、うん。』 「え、…僕ってそんな感じ?」 『うん、少なくとも中学のお前はそんな奴』 そ、そんなんだっけ…? 高校の自分に慣れすぎて、よく分かんない… 『徐々に、本来の自分が出せてきてるんじゃねぇか?』 「え?」 『良かったな、冬麻』 やっぱりダメだ。 涼に言われると、どんな言葉でも胸に込み上げてきてしまう。 けど… 「泣かないよ…絶対」 今、泣いてちゃ…まだ早い。 「ちゃんと両思いになって…思いが通じたら…」 電話越しの涼がふふっと小さく笑った。 『うん、やっぱお前はそうじゃなきゃ』 電話を切る際、涼が 『頑張れよ』 そう一言だけ僕にくれた。 最後にくれたその一言が、明日を頑張れる僕の強い活力になれるんだ。

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