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その音につられて、ゆっくりと工場に歩み寄る。
段々と強くなる波の音と悲しみ。
感じなかった優しい潮の香りが柔らかく漂うと、何故かその香りと共に体が後ろにそっと押される
見えない何かに柔らかく、拒絶されてるようだった。
その圧を振り払いながら、工場を通り過ぎ後ろにある海に歩み寄る。
「……はぁ」
白い砂浜に一歩踏み込むと、優しかった潮の香りが強くなり悲しい波の音が叫んでいるようだ。
思わず、目を瞑り後退りをしてしまう。
けど、
「冬麻!!」
ハッキリと捉えた、愛しの人の姿。
瞑っていた目を開け、海岸に座る冬麻の元へと駆け寄る。
「………」
「はぁ、やっと見つけた………帰ろう」
誘拐されてなかったと少し安堵し、ゆっくりと近付きながら手を差し伸べる。
何も発さずただ無言で、海を眺める冬麻。
いつも大きく強い色を抱えるその背中は、小さく色褪せているようだった。
「…ごめん、無理だ」
声を震わせながらそう言う冬麻。
「冬麻っ…「近づかないで!」
「…………」
柔らかく拒絶を見せる潮の香り。
それは冬麻から出てるんだと思ってた。
けど、今目の前にいる冬麻は
「……お願い、近づかないで……」
ハッキリと、俺を拒絶した。
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