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第18話

     ◇  文才がないということはハナからわかりきっていた。それでも僕は先生に憧れて小説を書き、いつか先生と同じ世界で活躍できる人材になりたいと思って努力を重ねてきた。  先生の代表作『墨溜まりに漂う』に、僕なりに続きを書いたものが『淫靡な貴方』だ。本当の続編は『在りし日の横顔』だけど、あの作品は世間的には売れなかった。  だから、僕がこの作品を発表して、先生を有名にする。そうしたら先生も再び文芸作家として筆を執ってくれるだろう。  何と素晴らしい連鎖。 「そうですよね、先生……先生?」  何度確かめても反応は同じだ。  僕が敬愛してやまない緋室先生に作品を読んでもらうという夢は、あまりにも儚く閉ざされてしまった。

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