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第60話 *
しかし、それでも彼の獣化はおさまらなかった。
「ウウッ、ウッ、グウウウッ」
獣特有の、喉元で転がるような鳴き声がしたかと思ったら、首輪に噛みついてくる。そして鋭利な爪で皮膚を引っかく。
肌に痛みがほとばしるが、それさえも狂いそうなぐらい気持ちがよかった。
「すいません、お客様、お客様、いらっしゃいますか」
ドンドンと、ドアが叩かれる。
「申し訳ありませんが、オメガの方がいらっしゃいますか。他の部屋のお客様から、匂いの苦情が出ています。部屋に常備してある非常用の抑制剤を飲んでください」
廊下から呼びかけられても、答えられない。
「おさまらないのなら、救急車を呼びますが。このままでは、周囲が混乱します」
すると、違う声も聞こえてくる。
「おいッ、あけろ! お前だけで喰ってんじゃねえよっ! 俺にも犯らせろ!」
オメガフェロモンにあてられた他の客の声だろう。獅旺は強い意志でバーストを押さえこんでヒト型を保つと、夕侑の性器を扱き、後孔に指を入れてかき回した。
「あ、ああっ、ああ、や、ッ」
「いくんだ」
「ああ、はッ、ああ、んぃ、イい」
「さあ、いけ。もっと、もっと」
ドアの外が騒がしい。
けれど、夕侑は自分だけの快楽に溺れていた。獅旺も歯を食いしばり、欲情に耐えている。ふたりとも途中でとめることなどできはしなかった。
「ごっ、ごめんな……さっ」
泣きながら何度も達する。
「いいんだ。かまうもんか」
燃えさかる炎のような発情が、射精するたび少しずつおさまっていく。
獅旺は夕侑をあお向けにして、首元に顔をうめてきた。歯でガリガリと首輪を傷つけながらリングのはまった夕侑の性器と自分のものを重ねて、自身の皮膚がすり切れるほど扱きあげる。
夕侑は激しい悦楽の中で、獅旺が自分の名を呼び、苦痛の叫びをあげるのを聞きながら、連続して頂を越え――やがて、意識を失っていった。
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