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プロローグ
国王の急死、第一王子の失踪という重大事件から三年。
一時騒然となったカテナ王国は、ようやく落ち着きを取り戻し始めていた。
いや、落ち着かされた、と言った方が正しい。
新国王の座に落ち着いた第二王子・ナガは、有無を言わさぬ強硬手段で荒れるカテナ王国をひとつに束ねた。
前国王の死に疑問を抱く者は、情け容赦なく粛清された。
ナガに反旗を翻す集団は皆殺しにされ、その首をさらされた。
失踪した第一王子の行方を探ろうとした者は、人知れず永遠に姿を消した。
あまりに苛烈なナガの方針に諫言を申し出た者は、自ら毒をあおらされた。
そして最後までナガに異を唱え、王国近くの小島に立てこもっていた数名の高官を含む最大の集団を殲滅した魔闘士・イナスは、その報告のため血まみれの甲冑のまま宮殿へ足を踏み入れていた。
返り血で染まったイナスの姿を見た文官、武官たちは皆震え上がって彼を見送った。
このような魔闘士の姿を見るのは、これが初めてではない。
この三年間、幾度も見せ付けられ瞼に焼き付けられた。
もし新国王に歯向かえば、次はお前の血でこの甲冑が染まる。
無言の脅迫が国中に植えつけられ、全ての人々は新国王・ナガに従うこととなった。
血塗られた王位継承劇だった。
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