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第78話
「おはよ、児玉」
「お、おはよう湊―――、望」
やっぱりいるよなぁ...いつも2人で、さ。
授業が終わり今は休み時間。チャイムが鳴ってすぐに湊と望が目の前に現れた。
「おはよう!啓吾、那智、優也!」
望は輝かんばかりの笑顔を俺たち3人に向けてくる。
「おはよう望」
望のあいさつに啓吾は笑顔を向け、優也は無表情で無言だった。
最近はこんなことを何度も繰り返している。啓吾も前とは違い、自分の席に着いていることが多かった。
まぁ、正しくはどこかへ行く前に望たちが来て啓吾を囲むからだが。
ちなみにそれもあって那智は啓吾と2人きりになれる機会が無く、後ろの席だというのに未だに啓吾とはまともに会話をしていない。
「そういえば、学校祭近づいてきたよな!今日各クラスで出し物とか決めるんだろ?俺、めっちゃ楽しみ!」
「転校してきてすぐに学校祭って、望も忙しいよな」
「あぁ、本当行事づくし!那智は何かやりたいのとかあるのか?」
さりげなく望の会話にコメントをいれると、望は啓吾の方を向いていた顔をこちらに向け話題の続きを振ってきた。
―やりたいこと...ねぇ。....まぁ、とりあえず
「俺は騒げればそれでいいって感じかな。今年もまた啓吾とバカやって...ぁ、」
“今年もまた啓吾と...”那智は今、自分自身で言った言葉にハッとして口をつぐんだ。
今の那智と啓吾の仲ではそんなこと...できる状況ではない。
すぐに啓吾の方を覗き見るが、啓吾はムスッとした表情で外の方を見ていた。
...啓吾は嫌、だよな。なんか理由はわかんねぇけど、俺、啓吾に嫌われちゃってるっぽいし。
「ん、どうかしたのか?」
するとそんな那智の様子に望は不思議そうな顔をする。
「ぁ、大丈夫!大丈夫!今日は暑いからちょっと意識が飛んじゃってさ」
あははっ、と誤魔化すように笑えば「確かに最近暑いもんなぁ」と望も同調する。そして湊はこちらを見てクスクスと笑っていた。
―あー、湊が俺に笑顔を向けてる...なんて、こんなことで喜んでる俺って、本当単純。
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