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第十一章・12
事後は疲れきってすぐにうとうとしてしまうリンだが、今夜は違っていた。
ヴェルフェルの髪に指を入れ、甘えるような仕草を見せる。
「ね、ベルヘル様」
「ヴェルフェル、だ」
「明日、一緒に人間界に行ってくれますか?」
「……何しに」
そう露骨に面倒くさそうな顔をしないでください、とリンは笑顔だ。
「1年6組の井上くんが、トラブルに巻き込まれてるんです」
放っておけ、とヴェルフェルは、やや乱暴に言った。
「お前はもう、あの学校の卒業生なんだ。あまり内部に手を出すな!」
「でも、学校には思い入れが深くて」
比呂士先生と、初めて出会った場所だから。
お願い、と手を合わせるリンは、天使候補生だったくせに小悪魔的魅力に溢れている。
やれやれ、とヴェルフェルはリンに向き直った。
「どれ、詳細を聞こうか」
「はい!」
これでは、大悪魔・ヴェルフェルも形無しだ。
輪の使い魔に成り下がってしまったな、と比呂士は犬歯をのぞかせニヤリと笑った。
「ヴェルフェル様、大好き♡」
「奇遇だな。私もリンが好きだ」
二人で抱き合い、指を絡めて額を合わせた。
肌を合わせ、心まで合わせて歩み始めた。
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