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第24話

「俺も……だ」  綺麗な涙を流す漆黒の大きな瞳を見つめたまま、ハルは自分の心につかえた刺が消えていくのを感じる。  チカの記憶がどの程度戻っているかは知らないが、下手な嘘をついてまで、家族でいたいと訴えてくるチカが愛おしくて仕方なかった。 「俺が怖くないか?」 「怖くない。好きだよ」 「チカの手と足を動かせないようにして、ずっとここに縛り付けたいって思ってても?」 「……いいよ。ハルがそれで許してくれるなら、僕は、ハルの家族だから」  求めていた答えを紡ぐチカの赤い唇に、たまらずキスを落としたハルは、逞しい腕で華奢な身体を抱き上げた。  人間を眷族にしようと思ったその時から、歪んでいるのは理解している。だから、自分だけのものにしたくて、二人だけしかいない世界で彼をここまで育てたのだ。  けれど、将来チカがここから出ていくという結論をだしたとしても、できる限り力になろうと思っている。  ハルには未来を見通す力は無いけれど、彼がここへと落とされたことには必ずなにかの意味があるから、ずっとこのままじゃいられないことは分かっていた。  せめて、その時が来るまでの間は自分の作った箱庭でチカと過ごしたい。 「いい子だ」  笑みを浮かべ、チカの涙を指で拭い、それから耳へと唇を寄せ「愛してる」と低く囁く。 「あい……して」  意味も分からずに反芻(はんすう)しているチカの唇をキスで塞ぎ、口腔を深く舌で侵せば、応えるようにハルの背中へとチカの爪がたてられた。 【END】

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