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第2話

 どうしよう。  声をかけようかな。  でも、特に親しいわけではない。 (なれなれしい奴、と思われるのも嫌だし)  もたもたするうちに、廉は遠くへ行ってしまう。  人ごみの中に、消えてしまう。  慌てて数歩前に出たが、その時にはもう彼の姿は見えなくなっていた。 「あ~あ」  せっかく、北園くんに話しかけるチャンスだったのに!  それでも、私服姿の廉が拝めたのだ。  巽はその日一日、得をしたような気持ちで過ごす事ができた。

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