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第12話

 巽は廉の前で、ちょっぴり背伸びをしてブラックを一口飲んだ。 「……おいしい!」  よかった、とマスターが微笑む。 「おいしい? 巽、やっぱり大人だなぁ!」  口の中に広がる苦味と、後味にすっきりとした酸味。  なるほど、これが純喫茶のコーヒーの味か! 「マスター、チーズケーキ二つお願い」 「了解」  え、と巽は廉の顔を見た。 「ここの自家製チーズケーキ、絶品なんだ。今日は僕が御馳走するよ」 「いいよ、払うよ」 「巽の純喫茶デビュー祝いだよ」  冷たいチーズケーキはしっとりとして甘酸っぱく、恋の味がした。  廉とはまだ、恋未満だけれど。

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