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第17話

「廉」 「あ、巽……」 「どうかした?」  そこで、廉が巽の腕を取って来た。 「ちょっと、一緒に……来てくれる?」  廉に密着されて内心嬉しい巽だったが、今は浮かれている場合ではないようだ。  彼の顔色が、やけに悪いのだ。  連れて行かれたのは、いつもの『いのうえ』。  ただ、そのドアには手書きの張り紙があった。 『お客様へ 店長急病のため、当分休業とさせていただきます』 「マスター、病気なんだって。大丈夫かなぁ」 「心配だな」  お見舞いに行きたいけど、病院が解らない、と話す廉の声は弱弱しい。 「すぐに元気になって、戻ってきてくれるさ。そしたら、またコーヒー飲みに来よう」 「うん……」  他のカフェに行く気にもなれず、巽は沈んだ廉を元気づけるためにカラオケへ誘った。  廉の頼んだ飲み物は、コーヒーではなくアイスティーだった。

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