16 / 31
第16話
日曜日の繁華街、巽の眼に、一人の少年の姿が飛び込んできた。
人ごみの中でも、際立って垢抜けた容姿。
彼を見つけることは、赤の中から白を探し出すくらい簡単だった。
「あ、廉だ」
胸がときめくのは、今でも変わりない。
廉の想い人はマスターだけど、そんな廉を見守るのが今の俺なんだ、と思っていた。
以前のように、声を掛けようかどうしようか、と悩むことはない。
すぐに彼に向かって、歩き始めた。
そんな行動がとれるようになっただけでも、大進展なんだから。
ただ、その日の廉は様子がおかしかった。
ともだちにシェアしよう!