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第15話
「いや、好きっていうか、憧れ! あんな風に、カッコいい大人になれたらなぁ、って!」
「そうだな」
あんな風にカッコいい大人が好みなのか、廉。
(ダメだ、とても敵わない!)
この人になら抱かれてもいいかも、とさえ思えるのだ。この俺でも!
「今日は何にしますか?」
「マスター、とびきり苦いコーヒーってありますか?」
おやおやどうしたことか、と笑いながら、マスターはティースプーンに一匙、漆黒の液体を運んできた。
「とびきり苦い、原液を試してみるかい?」
巽はそれを、舌の上で転がした。
苦い。
しかしその奥に、甘みが潜んでいるかのような味だ。
「苦いけど、甘く感じます」
「そう」
マスターは、笑った。
憎めない笑顔だった。
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