14 / 31

第14話

 その後も、時々巽は廉と一緒に『いのうえ』へ通った。  いろんなコーヒーを飲むうちに、苦味と酸味の違いも分かるようになったし、ウインナコーヒーには、ウインナーが入っているわけじゃないことも知った。  そして……。 (廉、またマスターの方見てる)  いつものカウンター席、他の常連客と楽しそうに話すマスターを、廉はぼんやり眺めている。  解る。  あの眼差しは、俺が廉を見る時と同じ色をしているから。 「廉、もしかして、マスターのこと好き?」 「え!? え、っと。いや、あの」  たちまち赤くなる、廉。  巽の胸は、ズキリと痛んだ。

ともだちにシェアしよう!