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第14話
その後も、時々巽は廉と一緒に『いのうえ』へ通った。
いろんなコーヒーを飲むうちに、苦味と酸味の違いも分かるようになったし、ウインナコーヒーには、ウインナーが入っているわけじゃないことも知った。
そして……。
(廉、またマスターの方見てる)
いつものカウンター席、他の常連客と楽しそうに話すマスターを、廉はぼんやり眺めている。
解る。
あの眼差しは、俺が廉を見る時と同じ色をしているから。
「廉、もしかして、マスターのこと好き?」
「え!? え、っと。いや、あの」
たちまち赤くなる、廉。
巽の胸は、ズキリと痛んだ。
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