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第19話
「僕、僕ね。大学生になったら、あそこでバイトさせてもらうつもりだったんだ」
「そうか」
残念だったな、としか言いようがなかった。
可哀想な、廉。
涙を拭い、よろよろと歩く廉の肩を抱きながら、巽は慰めの言葉を必死で考えていた。
慰めようがない。
廉は、マスターのことが好きだったんだ。
その、恋の相手が急死した。
俺だって、廉が好きだ。
廉が急に眼の前からいなくなったら、所かまわず泣くだろう。
「巽、僕ん家に来て」
「え?」
「いいから、来て」
「あ、ああ」
誘われるまま、巽は廉のアパートへ上がった。
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