20 / 31
第20話
「これ、見てよ」
キッチンに通された巽は、驚いた。
そこには、コーヒーを淹れるための器具が、ずらりと揃っていたのだ。
「これは……」
「いつか、マスターの役に立ちたい、って思って自分でもいろいろ勉強してたんだ」
だけど、とこぶしを握る廉の声は、暗く苦しく重かった。
「もう、必要ないよね。こんなもの!」
ミルを手にして振り上げ、床に叩きつけようとする廉を、巽は必死で抑えた。
「よせよ!」
ミルを取り上げ、廉を必死で抱き留めた。
ともだちにシェアしよう!