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第20話

「これ、見てよ」  キッチンに通された巽は、驚いた。  そこには、コーヒーを淹れるための器具が、ずらりと揃っていたのだ。 「これは……」 「いつか、マスターの役に立ちたい、って思って自分でもいろいろ勉強してたんだ」  だけど、とこぶしを握る廉の声は、暗く苦しく重かった。 「もう、必要ないよね。こんなもの!」  ミルを手にして振り上げ、床に叩きつけようとする廉を、巽は必死で抑えた。 「よせよ!」  ミルを取り上げ、廉を必死で抱き留めた。

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