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第31話
「廉、もしかして緊張してる?」
「してないよ、緊張なんか。それより僕のことは『マスター』って呼んでよね」
「了解」
数年後、廉と巽は小さな喫茶店を開いた。
お抱えマスターではあるが、廉が店長だ。
「早くお金貯めて、自分の店が持ちたいなぁ」
「まだまだこれから、だろ。まずは足元見ろよ」
「解ってる」
お客様一人ひとりに、最高の一杯を。
「その調子だ」
廉のこと、ずっとずっと支えてやるからな。
ドアベルが鳴り、二人組の男女が入って来た。
「いらっしゃいませ!」
二人の明るい掛け声は、その先何年も消えることはなかった。
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