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2nd perfect

「今の講義、どう思う?」 となりに座った、話したこともないヤツが、僕に話しかけてきた。 色が白くて、ニコニコ笑ってて。 なんかモテそうな雰囲気で、アッシュベージュの髪色の。 僕の方を向いて、頬杖をついてて。 笑いながら、僕の回答を待っている。 「今の……どの部分?」 「〝公害で病気になるのは、悪い環境の中で偶発的な要因と条件が重なっておこる。殺人を起こした犯人も然り。育った環境と様々な要因、そして、その人に与えた様々な影響が、殺人犯を作るのだ〟」 って、教授の真似をして言うから。 僕は思わず、笑ってしまった。 僕の反応に気を良くしたソイツは、得意げな顔をしてニコニコ笑う。 「そうだなぁ。 教授の言った事は、ごく稀な快楽殺人の犯人には、当てはまると思うけど。 育った環境が悪くても、立派に生活している人もいるし。 殺人犯が犯罪を犯してしまうのにも、それなりに切羽詰まった理由があってのことだし。 一概にはそう言えないと思うよ」 「優しいんだね」 「どうして?」 「〝悪い人が悪いことをしただけ〟って、考えてないから。 君の中の殺人犯は、快楽殺人犯でも性善説なんだね」 「じゃあ、君はどうなの?」 「殺人犯が色んな理由で犯罪を犯す考えは、一緒。ただ……」 「ただ?」 「快楽殺人の犯人は、快楽殺人をすべくして生まれくるから。 根っからのワルで……俺の中の快楽殺人犯は性悪説なんだよ」 ソイツは、僕をジッと見て言った。 顔は笑ってるけど、その切れ長の瞳は笑ってなくて。 ……少しだけ、背中が寒くなるのを、感じたんだ。 その人懐っこい笑顔で、僕に話しかけてきたソイツは、真緒と言った。 それがきっかけで、会うと話すようになって、一緒にいて楽しいから。 多分、毎日、一緒にいる。 「やっぱり、イチカは科捜研に行きたいの?」 「うん。科捜研の心理に行きたいんだけど、なかなか採用募集もでないからなぁ。真緒は?」 「臨床心理士」 「ストレスチェックのフォローとかで需要あるしね。科捜研ダメだったら、僕もそっちにしようかな?」 「いいんじゃない?イチカは、なんでも似合いそう」 頬杖をついて真緒は、笑って言った。 たまに、真緒からストレートに出てくるお世辞に、僕はまだ慣れなくて。 いつも目線を逸らして「なにそれ」って、言ってしまう。 「そうだ、イチカ。明日、うちの別荘行かない?レポート、一緒にしようよ」 「真緒ん家、別荘もってるの?!」 「親父の持ち物なんだけど、たまに行かないとボロボロになっちゃうからさ。管理をかねて」 「……すごいなぁ。でも、僕なんかが行っていいの?」 「大丈夫。親父には言ってあるし。明日、9時に家に迎えに行くから」 「わかった。ありがとう、真緒」 真緒は、また僕に人懐っこい笑顔を向けた。 真緒の別荘は、別荘地から少し離れたところにあった。 一面はガラス張りで、モダンな別荘で。 思わず「すごい……」って、言ってしまう。 「こういうとこ、はじめて?」 「うん……なんか、緊張するよ」 「別荘って、リフレッシュするところだし。早くレポート済まして、ゆっくりしようか」 「そうだね」 僕らは、その立派な別荘に足を踏み入れた。 一面ガラス張りのリビングからは、景色が見渡せて。 その景色が今まで見たこともないくらいキレイで、気もそぞろになってしまうくらいで。 真緒と一緒にレポートを書いたから、ちゃんと終わったようなものだ。 真緒がここにいなかったら、僕はずっと、外を眺めていたかもしれない。 「ほんと、キレイだね。静かだし」 「ちょっと別荘地から離れてるからね。夜はかなり静かだよ。イチカ、そろそろ夕飯にしようか」 「うん。何か手伝うことある?」 「チーズフォンデュにしようかと思って。白ワイン開けるから、飲みながら待っててよ」 「いいの?」 僕が相変わらず外を眺めていると、真緒がワイングラスに白ワインを入れて持ってきてくれた。 「ありがとう。……ここ、本当、静かでいいとこだね」 「気に入った?」 「うん」 僕は、ワインを口にした。 アルコールのピリッとした刺激が、舌を刺して。 喉も渇いていたから、思わず、一気に飲み干してしまって……。 ーカシャーン………。 僕の手から滑り落ちたワイングラスが、床に落ちて、乾いた音を立てる。 「真緒……僕………」 なんか、変……って言いたかったのに、言葉も出なくて。 体が重たくなって、頭もボヤけて。 真緒に体を支えられた感覚だけ残って。 そのまま、僕の目の前は、真っ暗になってしまった。 「!!」 僕の中に熱い何が入っていて、激しくかき乱す……。 体験したことのない変な感触と痛さに、僕は体をビクつかせるほど、驚いてしまった。 逃れたいけど、体が言うことをきかない。 声を出したいけど、頭がぼんやりしてハッキリした声が出ない。 出るのは、吐息と喘ぎ声……。 目を開けると、目の前に真緒がいて、僕に覆いかぶさって、僕を激しく揺さぶっている。 「イチカ?気がついた?」 「真……ん、んっ………緒」 「強い睡眠剤が入ったワインを一気飲みするから……。でも、イチカ………すごく色っぽいよ。どんどんイジメたくなっちゃう」 そう言って真緒は、僕に唇を重ねた。 無抵抗の僕に、真緒の舌が激しく絡んで。 その刺激と下からの刺激で、僕の頭はさらに混乱してくる。 真緒からもたらされる色んな感覚や刺激で、僕自身がいっぱいいっぱいになって、思考が停止してしまった。 「やっぱり、………勿体なくなっちゃう」 〝勿体ない〟って、どういうこと? 思考はだんだん戻ってきて……。 でも、体は自由にならなくて。 真緒が僕に残した感覚が、全然消えなくて。 痛くて....キツく....て、思わず涙が出てしまった。 「何?泣くくらい、よかった?」 真緒は僕を抱き起こすと、真緒の上に後ろ向きに座らせた。 僕の中に、また、あの、熱い、感覚が入ってくる。 「!!……真…緒………。や、や…やめ……て」 「やめない」 真緒は、その舌で僕の首筋を激しく愛撫して。 その両手で僕の身体中を、激しく刺激する。 そして、突き上げるように、僕を揺さぶった。 キレイな景色が見えていた外の風景は、すっかり日が暮れて真っ暗になっていて。 鏡みたいになったガラスが、真緒の上に座って足を大きく広げて感じまくってる僕を、鮮明に映し出す。 その姿が信じられなくて、恥ずかしくて……。 僕は思わず目を閉じた。 「イチカ、見て。イチカの恥ずかしい姿が、ガラスにうつってるよ………。たまらなくなっちゃうね」 そう言うと、イチカは、より一層、僕を激しく弄ぶ。 いつまで続くか、わからない……。 その恐怖と快楽から、僕はまた泣いてしまった……。 ✴︎ 本当は、殺す相手を。 ターゲットを探してた。 俺は根っからのサイコパスだって、自覚している。 そうすることは、俺にとっては当たり前のことで、でも社会には認めらないから。 どうやって、ターゲットを追い込むか。 どうやったら、バレないか。 私利私欲を満たすためだけに、心理学を学んだ。 いつも1人でいる、目立たない学生。 男女問わず、そういう子を見つけては、連れ出して弄んで、俺の欲求を満たしたら。 ー壊して、捨てる。 イチカもそのターゲットの1人だった。 ただ、イチカは....とても....あまりにも、魅力的すぎた。 あんまり、親しくなるんじゃなかったって、後悔したくらい。 イチカの笑顔やかわいい仕草が、いちいち俺の胸に突き刺さる。 早くしないと、イチカから逃れなくなる……。 そう思って、実行した。 その考えは、多分、もう遅かったんだ。 イチカが、睡眠剤入りのワインを飲んで、意識が混濁しだした時。 イチカのキレイで小さな顔や、服から覗く白く細い体が。 とにかく、イチカの全てが、俺を刺激して。 〝生きてるうちに、俺のモノにしたい〟って、欲求が勝ってしまって。 意識がなくなったイチカの服を脱がして……。 イチカを俺のモノにした。 ヤッてしまえば、イチカをモノにした達成感から愛着も消えて、イチカから逃れられるだろう、と思っていた.....けど。 それはまさしく、逆効果で。 殺すのが、勿体ない。 こんな人、他には絶対、いない。 俺に感じるイチカの体や声が、俺を想像以上に支配して………。 俺はもう、イチカのすべてから逃れなれないんだと、さらに深く、キツく、気付かされる結果となってしまったんだ。 ターゲットのつもりだったのに、ターゲットにされた感じがした。 そして、俺の上で喘ぐイチカが、やらしい。 ガラスに映るイチカのあられもない姿が、俺の欲情をさらに掻き立てる。 「ん……や……め、ん……て」 「.........本当にやめてほしい?すごく、感じてるのに?」 イチカを力を込めて抱きしめると、俺はそのまま激しく動く。 イチカの声がより激しくなって、俺を締めてくるから……。俺は、我慢が出来なくなってしまった。 俺に感じまくって、イチカはぐったりしていた。 呼吸が荒くて、小さな頰には涙のあとが残っていて。 その一つ一つが、いちいち俺を刺激してくるから、またイチカを求めてしまう。 イチカの手を取って、上体を起こすと四つん這いにして、俺はまた、イチカを攻めまくる。 止まる気配のないくらい激しく動く俺に合わせて、またあの艶めかしい声でイチカが喘ぐ。 「………やぁ、ん……や……」 口ではそんなことを言っていても、イチカの体がだんだん俺を求めて来ているのが、わかった。 俺は、そっと。 イチカのキレイで細い首に、両手を回す。 もちろん、力は入れない。 イチカが動かなくなったら、俺が困るから。 「!!」 イチカが、ビクッと体をしならせる。 「大丈夫……。力は入れないから………。でも、殺されそうになるって、なんか余計、感じるんじゃない?」

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