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第40話 普通の
太くて、硬くて。
「ン、っン……んく……ン、ん」
熱いカズの。
「ん、んっ」
いつも、これで気持ち良くなってる。
「ん、ん、ン」
カズのペニスに舐めてしゃぶりついた。
喉に当たるくらい咥え込んで、頬を窄めてできるだけ気持ち良くなれるように狭いところで扱くように頭を動かした。
ずるずるって引き抜くように唇から離して、裏筋に沿うようにキスをする。根元には音を立てて口付けて、そのまま、熱いのを溜め込んだそこを口の中に頬張った。
はしたないほど、舌を使って、ペニスを丁寧に愛撫したい。
「ナオ……」
「ん、ぁっ……」
窄めていた頬を撫でられて、何度も口の中に滲むカウパーを飲んでいた喉を指先でくすぐられて、こそばゆさに口を離すと、息を乱したカズと目が合った。
目を細めて、俺の名前を呼ぶその唇を舌で濡らして。ゾクゾクするほど、物欲しげな瞳に射抜かれた。
「ナオ」
「ン……」
「ナオ」
フェラ、気持ち良かった? 俺の舌は、カズを気持ち良くさせられた?
「ナオの」
「ン、んくっ」
キスって呼べないくらいに唇同士を重ねて舌を互いの口の中に捻じ込んだ。乱して、絡まり合って、唾液が零れるのもかまわず、粘膜を舐め合う。
「ナオの中、挿れさせてよ」
「ぁ、ン」
「入っていい?」
「あぁぁぁっ」
ずぶずぶと抉じ開けられて、とろりとカウパーみたいに白が鈴口から零れた。
「あっ……ン、もっと」
また、零れる。とろりって、白が。
「ぁっ、あー……あぁぁっ! あ、あ、っ気持ち、イっ」
ゆっくり零れて、抜けかけたペニスが一気に押し戻されると、ぴゅっと小さく漏らしてしまう。
「奥まで突かせて」
「あ、あ、あ、あ」
ずっとイってる。
「ナオん中」
「ぁ、あぁあっン、ぁっ、ン」
イくの止まらない。
「とろっとろ」
「ン、だって」
脚を自分からもっと開いて見せた。脚の間に突きたてられてるのがよく見えるように、孔に手を添える。
「カズのが、入ってる、から、ぁっ……ン、中、悦んでる」
蕩けた身体を見せつけた。甘イキしてる身体を。
「ぁ、あぁぁぁっ」
「っ」
「ぁっ……ぁっ」
強く、ゆっくりと中を擦り上げるように突かれて、押し出されるようにまた零れるんだ。白いのが、ほら、とろって、零れ落ちて、身体が濡れる。
「ずっとイってる。ナオの中、きゅんきゅんしっぱなし」
「あ、だって……」
孔が奥まで切なくしゃぶりついた。あんなに太くて、硬くて、熱いカズのペニスに。
「カズとセックス、してる、からっ、あっ、あぁぁっ……ン、ぁっ」
ベッドが軋んだ音を立ててるくらい激しく貫かれた。
「あぁぁっンっ、ぁっン……ぁっ、あっ」
声なんて我慢しない。壊れるくらいにして欲しいんだ。声も枯れて、ぐちゃぐちゃになるくらい抱き合って、お互いの身体の境界を溶かしたいみたいに絡まり合って。
「あっ!」
「ナオっ……」
「あ、ぁ、中、に、出してっ」
これは、俺の。
「カズっ」
「っ」
「あ、あ、あぁぁぁぁああぁぁっ」
――その仮面、全部取ったら、お前はどんな顔してるんだろうな。
「あっ…………ンっ」
「っ」
「んんんっ、ン、ぁっ」
「ナオ」
こんな顔をしたカズは、俺しか、きっと知らない。
「ナオっ」
こんなカズは――。
「あ、お母さん……うん。ごめんなさい、終電逃しちゃって……うん、ファミレスにいたんだ……うん……あとちょっとしたら帰るよ。え? カズも? ……そうなんだ。知らなかった。うん、わかった。……はい。気をつけます」
電話を終えたら、なんかどっと眠気に襲われた。
「キレられた?」
「ううん」
「は? ズルくね? 俺、すげぇキレられたんだけど」
「だって、そりゃ……」
高校生だからね。外泊はさ。
「だからちゃんとここ泊まる時にメールしたって」
「電話しとけばよかったのに」
「……やだったんだよ」
カズがぷいっとそっぽを向いた。拗ねたりするところが高校生っぽいって、今,言ったらもっとむくれてしまうんだろう。
「……親に電話して、ナオが急にやっぱやめるとか言い出したらって」
「……」
「冷静になられたらやだから、電話しなかったんだ」
メールなら誰と話してるのかなんてわからないから。酔って、具合の悪くなった俺を抱えながらじゃ、カズの声だけでなく電話の向こうに誰がいて、どんな話をしているのかもわかってしまうかもしれないから。
「……やめるって、言わないのに」
「……」
「言うわけ、ないだろ」
そっと、口付けた。唇に触れて啄ばんで離れる甘いばかりのキスを。
「ずっと、カズに抱かれたかったんだから。ずっと好きだったんだから」
「ナッ、」
「ほら、帰ろう。カズが先に帰りなよ」
「ナオっ」
「うちに帰ったら、ちゃんとフォロー入れてやる」
「ナオっ」
「帰るよ。カズ」
うちへ。家族として、兄弟として。
「ナオ」
「上手に、しないと」
ごっこ、だよ。ごっこ遊びをうちでするんだ。俺が兄で、カズが弟で、とても健やかで仲は……うーん、まぁまぁ普通。至って普通の兄弟らしくしておかないといけないって笑って、普通に部屋を出た。
一歩。
外に出たらただの兄弟、のフリを。
そして扉を開けた。
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