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第75話 ラブホテル
小さい頃からあるラブホテルだった。駅から少し離れているところにポツンと建っていて、幼心に、観光地でもないのにここの旅館にはどんなお客さんが来るんだろうって不思議だった。後々、それが旅行客用の旅館ではないとわかると、思春期だった俺は、今度は別の意味で気になった。
あの中で、今も誰かが――そんなことを気にしたりして。
「……ナオ」
「ンっ……」
たくさんの人がここでキスをしたのかな。
「最後まで、してもいい?」
「? 何? 急に」
「ゴム、部屋に忘れた」
「持ち歩いてないの?」
「持ち歩くわけねぇじゃん」
たくさんのカップルがここでセックスしたのかな。
――おーい、直紀―! 早く行こうぜー! って、何なに? ラブホテルが気になっちゃう? まぁ、気になるよなぁ。あの中では、今も、カップルがイチャイチャ、イッチャイッチャしてんだろうなぁ、かぁっ! 羨ましい!
学校帰り、司がそんなことを言ってたっけ。
「ナオ? 何、笑って」
「んー」
――あの中では、今も、カップルが。
そう思って、ちょっと羨ましかったっけ。今、そのホテルにカズといる。
「カズのこと、好きだよって思っただけ、っぅわぁっ!」
「……もう、マジでなんなの。そういうことそういう顔で言わないで。ゴムなしがいい。ナオの事このまま抱きたい」
だって、好きなんだ。ただ好きになった人が弟だった。何度も何度も諦めようとした。忘れようとした。もうずっと苦しかった。それでも、好きっていう気持ちが消えないくらい。好きなんだ。
「しないでいいよ」
その好きになった人が弟だった。
「あと……」
ただそれだけのことなんだ。
「好きって、言って? ……カズ」
キスと一緒にくれる「好き」に全身が嬉しそうに震えた。
カズが好き。
「ナ、おっ……」
好きで、好きで、欲しくて、たまらない。しゃぶりつきたくなるほど、カズが欲しい。
「ン、んっ」
「ナオっ」
苦しそうに眉をひそめながら、カズが俺の髪を撫でてくれた。そしてその指先が「ねぇ」と呼ぶように、頬を撫でた。
「ナオのフェラ、やばい。も、イきそ」
「っ、ンっ」
「ね、ナオ」
飲ませて。
「ン、ん」
「ナオ、っ」
カズの、飲みたい。
喉奥に流し込んで。舌をそれで濡らして。
「ン……んん」
「ナオっ、口、離して」
やだってば。
「ナオっ」
飲みたいんだ。カズの欠片ならなんだって、欲しくてたまらないから。
「ナオっ、……エロすぎ。飲みたいの?」
「……」
「い……よ。ナオの舌でイかせて?」
「っ、ん、ン、んんんっ」
喉奥で熱が弾けた。とろりとその熱に濡れる。
「っ、っ、はぁっ……ナオっ」
「……ン、く」
雫一つだって零さないように、唇を窄めて、舌先を絡みつかせて、口の中でイったカズの熱を飲み干した。
「っ、ナオ」
「ン、カズ……早く、ここ、して?」
フェラするの好きだよ。気持ち良くてたまらないんだ。
「カズの、早く、挿れて……」
このペニスで後で中を擦られるんだって思うと、それだけでイきそうになる。
「ここ……ぁっ」
ベッドの上で仰向けに寝そべり脚を広げながら、まだ柔らかくなっていない小さな孔に自分の指を少し埋め込んだ。くぷりと、咥えて、小刻みにそこを。
「はぁっ……ン、ぁン」
いじって、ねだろうと思ったら、その孔にカズの指がつぷりと入ってきてくれた。嬉しくてキュンキュンと悦ぶ孔を一番長い中指で貫きながら、敏感でくすぐったがりな俺の肌に齧り付いてくれる。
「あぁっ……ン」
吸い付いて、舐められて、歯を立てられて。
「はぁ、ぁ、ん、カズっ」
感じすぎておかしくなりそう。
「ぁ、ぁっ」
中を指でくちゅくちゅ柔らかくなるよう、セックスに悦ぶ孔になるようほぐされながら、キスが首筋から鎖骨、胸へと降りていく。
「やぁぁっン」
「乳首、コリッコリ」
「ぁ、ん、それっ」
二本に増えた指に、齧られてツンと勃起した乳首に絡みつく舌に、指じゃ届かない奥が疼く。
「ナオ」
「あっ、はぁっ……ぁ、あ」
気持ちイイ。舐められて、歯で、指で、可愛がられた乳首が感じて、震える。
「ナオの、もう、カウパーすごい溢れてる」
「ぁっ、だって」
「トロットロ。ね、ナオ? この音、すごいエロいでしょ?」
「あ、んンンんん」
指で前立腺を押されて、二本の指で挟むようにされて、腰の辺りがじわりと熱くなって濡れたような気がした。
きっと、また溢れた。
「あっ……ン、ダメ、ンぁ、イっちゃうっ」
そして、溢れたカウパーまみれのペニスにキスされて、腰が浮き上がるほど悦がってしまう。
カズの舌に溶かされそうになる。舌が濡れた音をさせながら俺のを舐めて、小さな鈴口を啜るようにされながら、その舌でほじくられて、背中が快感にわなないた。
「ぁあ……ン」
気持ち良くて、蕩けそう。
「あ、あ、あ、っ、吸っちゃ、ダメって」
「……」
「あぁぁっ、あっ」
ちゅくちゅくと甘い音をさせながらペニスをしゃぶられて、その唇に舌に可愛がられて。
「あっ、ダメっ出ちゃうっ、口に」
「っ」
ゾクって、した。
俺のカウパーが零れすぎて、丹精で骨っぽいカズの顎のラインを汚してしまったことに。
「ぁ、ん、イっくっ……んン」
あの唇に犯されてることに。
「あっ、イくっ、イくっ……ぁっ」
カズの長い指がペニスの代わりに可愛がってくれた中が悦んで、舌先にほじくられた鈴口から苦くてはしたいない白が溢れて。
「あぁ……ン、カズっ」
弟の舌を濡らした。
「あっ……はぁっ」
乱れた呼吸を繰り返してたら、その口を塞ぐように舌を差し込まれて、キスにまた中が火照る。絡み合う舌が気持ち良くて。もう、無理だ。
「ぁ、カズ」
もう。
「早く、この中、カズの……挿れて、奥まで掻き混ぜて」
もう欲しくておかしくなりそうだから、自分から脚を広げて、孔を指で撫でて、今までで一番淫らな声で。
「カズ……」
愛しい弟を呼んだ。
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