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序章

「白狼さ、一回だけ僕を抱いてみない?」 神に人型にしてもらったはずの、孤高の種族、紅妖狐、蘇芳。 彼、蘇芳の天真爛漫で破天荒な部分には手を焼くが、愛情を身体で表現する姿は愛らしい。かと思えば下着姿で抱き着いてきたり、戯れに尻尾で愛撫してくる妖艶さ。無邪気でも無意識でもなく、悪戯好きの子どものようだ。 今も油断し風呂場で泡しか身に纏っていない蘇芳が腹の上に跨ると、腹にふにふにと陰嚢を押し付けてくる。つい、「うお」と反応したせいで、擦るように当てて無邪気に笑っている。完全にこれは襲われている。 「今動いたら、石鹸に滑って頭打ちそうだから。無理に動かさないでね」 「卑怯な人だ」  にやりと笑うと、泡だらけの尻尾が白狼の下半身を撫でていく。器用に足の先から付け根まで撫で上げて、下半身の熱が溜まっていくのを愉快犯は見下ろしている。 「……やっぱり大きいね」  熱を持って顔を上げ始めていた肉茎を、尻尾で刺激すると声を漏らした。自分よりも何倍も逞しい男が、尻尾の刺激に耐える姿は、征服心を仰ぐ。  けれど尻尾で刺激するたびに、熱量やずしりと感じる重さに蘇芳も興奮を止められなかった。 「ねえ白狼。これを僕の中に入れて、内襞を擦って、精を放ってくれたらきっと気持ちがいいんだろうね」  今すぐ宛がって、自分の体重で沈みながら、白狼の肉茎の形や熱を体の奥で感じたかった。  感じて乱れて愛し合い、子種を溢れるほど注がれたい。  尻尾で輪郭をなぞっているだけなのに体の奥が疼き、ツンとした甘酸っぱい期待が下半身を火照らせる。露わになった胸の尖りを泡が滑るだけで、声が漏れそうだった。 「兄さんたちを見て勉強したんだ。僕の閨房術を味わいたくない」 「けいぼう?」 「よくわかんないけど、セックス中のテクニックかな」 泡で隠れていた胸を自分でなぞり、赤く実り敏感な突起を押し付けてくる。 「やはり何かあったんだな」  一瞬の不意を突き腕を掴む。上半身を起こしながら蘇芳が滑らないように引き寄せると、白狼は辛そうな顔で見下ろしていた。  蘇芳は嘘を上手に隠せない自分に嫌気した。相手を騙すには、表情、言葉、態度、行動と並べてみても、結局、最後は愚直なまでの真面目さに負けてしまう。  一度だけ思い出を刻んでくれたら、運命を諦めて白狼ではなく白翁を選べるかもしれない。  そんな情けない願いを、白狼は抱きしめて胸の中でかき消していく。

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