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十四章 八

 二人は二匹の子供たちの不満を口にしながらクスクスと笑った。 「今日は久しぶりに蘇芳さんの隣を独占したいな」 「僕も。あの二人が眠ったらこっそり移動しよう」  二人はきっと朝起きたら文句を言うかもしれないが、今日ぐらいは久しぶりに互いに抱き合って眠りたい。 「翡翠と茜が邪魔しても、今日は意地でも隣で寝る。離れないからな」 「うん。離さないでね」  見上げて、うっとりと目を閉じる。きっとこの人は、この先ずっとこんな風に振り回してくるのだろう。愛おしく、そして目が離せない。白狼は苦笑しながらも唇を重ねた。  ***  桜が散っていく。次に桜が咲き誇るとき、春夏秋冬に関連した四匹の狐と狼の子どもが生まれる。  蘇芳そっくりの狼の子や、白狼そっくりの狐の姿に、運命が完全に混ざり二人のきずなが勝ったのだと誰もが祝福した。  翡翠と茜は、珊瑚やマリと四匹の獣の赤ちゃんを眺めて感動していた。 駆け付けたイアフは、号泣した。声にならない声になるまで泣くとホッとしたのか白狼は殴られた。 慌てて仲裁した蘇芳に号泣され、責められたイアフは蘇芳を抱きしめて謝ったり、暁がそのついでにプロポーズをして全く相手にされなかったり、穏やかではないが幸せな日々に、運命は呑み込まれていく。 「白狼―」  小さな子供たちに囲まれる、世界で一番綺麗な色。 「蘇芳さん、まだ体が完全じゃないので動き回らないでくださいね」  抱きかかえ屋敷に戻ろうと歩き出すと、足元の子どもたちが「ぼくも」「わたしも」と足を引っ掻く。 「順番だが、一番はいつも蘇芳さんだ」  とびっきりに惚気た白狼が、抱きしめた蘇芳に唇を重ねた。こうして運命を切り裂いた二つの種族の、狼と狐は幸せに暮らしたのでした。 いつまでも、いつまでも。               終

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