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十四章 七
「そうか。……少し、外を散歩しないか?」
蘇芳の手を取る。蘇芳は一瞬首を傾げたが、車から降りてきたイアフを見て頷いた。
イアフは蘇芳の頭を撫でた後、縁側から屋敷に入っていった。そのすぐ後に、珊瑚の泣き声が聞こえた気がしたが、その場をそっと離れたのだった。
「今日はちゃんと大人しくしてくれてた?」
「もちろん。あ、でも洗濯物を干すのがきつくなったな。腰ぐらいの高さの物干し竿がいいなー」
「洗濯は、帰ったら俺がしよう」
「ぷぷ。そう言ってたら、全部白狼がしちゃうじゃん。僕、家事何もすることなくなったら走っちゃうぞ」
走るポーズを取り、先に行こうとする。
「走るなら、離さない」
後ろから強く抱きしめる。危なっかしい愛しい花嫁を、後ろから捕まえながら自然にそう言ったつもりだった。
が、振り返った蘇芳は、少し腫れている白狼の頬を撫でた。
「これ、お義兄さんにやられたの?」
「暁に殴られるへまはしないだろう」
茶化す白狼に、蘇芳は頬を膨らませる。
「大丈夫。あの人は心から蘇芳さんを心配してくれているだけだから」
お土産のいなりずしを渡すと、尻尾をぶんぶんふって喜んでくれた。
「白狼のお母さんのお稲荷さんも美味しいんだけど、このお稲荷さん、天かすが入ってるのかな。ちょっとさくさくして美味しいんだよねえ。あーはやく食べたくなってきた。
幸せそうにクスクスと笑うと蘇芳は背中に体重を乗せ、白狼に寄りかかる。
「お義兄さん、珊瑚を連れて行くんだね」
「まあ珊瑚の気持ちが一番だが、だが珊瑚もきっとついていくだろうな」
変に大人びた子供になったが、クリスマスにイアフが戻ってくると年相応の子どもになって目を輝かせていた。
やはり親のぬくもりが欲しい時期なのだろう。一緒に暮らすにはいい時期だ。
「茜は最近、白狼にべったりでしょ。僕が白狼の隣なのに、最近独占欲が強くてずるいんだよね」
「翡翠も蘇芳さんにべったりだ。俺も翡翠に隣に来てほしいが蘇芳さんの上でしか眠ってくれない」
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