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第一章・5
あぁ。もう俺は、優希を以前と同じ目で見ることができない。
あの声、あの姿、あのふるまい。
何をとっても切なくなる。
ほら、今日もこちらにやってきた。
俺がどんな目で見ているかも知らずに、無防備にやってきた。
「要人、最近僕を避けてないか?」
「え?」
避けるだなんて、そんな。
いや、火照る気持ちに気づかれないよう、わざと距離を置いていた。
でも、それは避けるという事とはちょっと違う。
そう思われると、困る。
「何か気に障るような事を言ったかな。もしそうなら、ごめん」
「いや。いや、違うんだ。優希」
ここでは何だから、と場所を変えた。
いつものカフェ。
いつものカフェ・オレ。
でも、この日はベーグルは頼まなかった。
いつもと違い、要人はやけにぎこちなかった。
話しているかと思えば、気づいたら上の空。
視線を合わせたり、逸らしたり。
挙句の果てに、妙な事を言いだした。
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