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第一章・6
「あの、な。優希。俺と付き合って……くれないか?」
何を今さら、と優希は怪訝な顔をした。
もうすでに、付き合っているではないか。
今、ここでこうしてお茶を飲んでるじゃあないか。
そう言う優希に、要人は飲み物の残りを一気に干すと、真正面から見据えて訴えた。
「そうじゃなくて。その、友達としてじゃなくて……あの、もっと……」
まさか。
まさか、要人。
その先は、ダメだ。
それは、言っちゃダメだろう。
優希の揺れた目の色に、要人は自分の言っている言葉の意味を、彼が理解したことを知った。
そうなんだ、優希。友達以上の、恋人として付き合ってほしいんだ。
「返事は今すぐにじゃなくていい。明日。明日、この時刻にここに来てくれ。返事は、その時に」
一気にそう言うと、要人はその場からゆっくり去って行った。
本当は、逃げるように駆け出したい気分だったが、それではいかにも悪い事をしているみたいではないか。
自分の気持ちに、一点の曇りもない事を現すために、要人は一生懸命ゆっくり歩いて行った。
要人が恋人に?
残された優希は、自分がいつ、どうやって自宅に戻ったかも解からないくらい動転していた。
食事をとる時も、バスタブに浸かる時も、ベッドに入ってからも、ずっと要人の事ばかり考えていた。
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