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第五章・20

 慌てて眼を見開き、大きな声を上げる優希が可笑しくて可愛くて。  笑う要人を真っ赤になって小突き、文句をぶうぶう垂れる優希。 「こんな! キス……は、もっと。アレだ、その。つまり」  つまりは、もっとロマンチックに、だろぅ?  笑い顔を和らげ、要人は優希の方に身を乗り出した。  ゆっくりと、じわじわと、顔を近付けていった。 「か、要人? か、ね……」  と、の音は唇で塞がれ、飲み込んだ。  優希は瞼をとじ、息をつめてキスを感じていた。  これが、キスの感覚。  要人の愛情の、ひとつ。  訪れた時と同じように、要人はそっと離れていった。

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