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第2話

「遅いよ、先生。」 教室の戸を開けると、教室のいつもの場所に石田が座っていた。教室の中はもう、誰もいない。石田だけが残っていた。誰か残っていてくれればよかったのに。 私は石田の横に立ち、教科書を覗き込んだ。 「何処がわからないんだ?」 私が訊ねても石田は何も答えない。その間が少し怖く私は今すぐ帰りたくなった。しばらく無言が続き、石田が私の手を強い力で掴んだ。石田の方を見ると、真っ直ぐな目で私を見つめていた。またその視線だ。咄嗟に逃げようとしたが視界が反転した。背中に鈍い衝撃を受け目を開けると石田の顔が視界いっぱいに広がる。 どうやら、石田によって押し倒されたらしい。状況を冷静に考えてしまう自分が怖い。 「何をしているんだ、石田…いますぐ退きなさい。」 若干、声が震えているのが分かる。なんて情けないんだ。 石田をどかそうと胸を押しても動く気配はない。こんな事なら、体を鍛えるべきだったと泣きそうになった。確か石田は剣道部。鍛えていない私が何をしようと無駄なのかもしれない。 「先生は気づいているんでしょ?」 石田は私の耳元で囁くように言った。耳に息がかかり鳥肌が立った。 恐怖が私を支配する。この状況はいったい、と自問自答するばかり。 足が机に当たり、ガタガタと音をたてた。 「…私にはいったい何の事か分からないよ。」 石田からの視線には気付いていたが、理由までは私には分からなかった。 石田は俺の言葉に嬉しそうな顔をした。 何でそんな顔を…普通逆じゃないのか? 「先生は嘘を付くのが下手だね。視線には気付いていたけど理由は分からないって感じ?」 耳にぬるりとした感触を感じ、私は小さな悲鳴を上げた。全身の力が抜けていって、抵抗もままならない。気づきたくない、石田の視線の理由を。気づいてしまったら、私は石田を生徒として認識できなくなる。教師として振る舞えなくなってしまう…! 「っ…やめなさい!今ならまだ許すから、早く離しっ…!」 最後まで言葉を言い切る前に石田のキスによりによって口を塞がれた。最初は触れるだけだったが次第に舌の存在が私の腔内に入ろうとしてきた。私は唇を噛みしめて舌の進入を拒み続けたが石田は私の服の中に手を入れてきた。私は驚いて咄嗟に口を開いてしまった。その瞬間に舌が口の中に入り込み、ぬるりとした感触と生々しい臭いに全身が拒絶を示した。 「……っ、んん!」 女性経験が皆無に近い私にとっては強すぎる行為だった。何度も舌を絡められて、時々、甘咬みをされる。そんな繰り返しのうちに酸欠で頭が回らなくなる。目線もどこか宙を見ていて、うまく定まらない。離された頃には抵抗する気力は残っていなかった。 「先生にずっと触れたいと思ってた。好きなんだ先生。」 嗚呼、その言葉を聞いてしまった。 気づいてしまったら、元の関係には戻れない。 おわり

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