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宣告。
何となく体調が悪い。
そう思って行った病院で
俺はもうそんなに永くないことを知った。
20代も半ばを過ぎ、間もなく三十路になろうというのに、それを待つことなく、俺の人生は幕を降ろすらしい。
何と呆気のないことか。
余命宣告を受けた時、それは他人事(ヒトゴト)のように俺に落ちてきた。
どこかでそんな気がしていたからかもしれない。
初めは、風邪が長引いているんだろう、そう思っていた。
昔から風邪は治るまでに時間を要したこともあり特に気にもしていなかった。
しかし、予想した頃合いになっても治る気配がなく、今回のは執拗いなと感じていた。
今思えばそう感じた時、病院に行くべきだったのかもしれない。
結果は変わらないだろうが、今より幾分かはマシだったろう。
幼い頃、通院が長かった所為か、すっかり病院嫌いになっていた俺は
やっと重い腰を上げ、今に至る。
病院の帰り
さて、どうしたものかと思い
ああ、と思い出したように母親に電話した。
すると少しの沈黙の後に
「……そう、分かった。 今からそっちに行くから」
そう言って電話を切った。
久しぶりに聞いた母の声からは少しの動揺が感じられた。
家に帰り、一息ついていると呼び鈴が鳴らされた。
ドアホンを確認すると母だ。
思いの外早い到着に、余程急いだんだなと思った。
ドアを開け、部屋へ通すと
荷物を置くのもそこそこに
テーブルに着いて、俺にも座るよう促す。
「…どういうことか、説明してもらえる」
疑問符も付かない母の声は
静かな怒りが見られるようだった。
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