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母親という人。
俺は医師に言われたことを簡潔に説明した。
治らない病気であること
明確な治療法がないこと
余命がどう長く保っても2年に満たないこと。
俺は自分のことであるはずなのに
まるで友人や知人がそうであるかのように淡々と話した。
その間母は、黙って俺の目を見て話を聞いていた。
話終えると母は目を閉じ俯いた。
少しの沈黙のあと、顔を上げた母は
涙を流し、泣いていた。
思わずギョッとして目を見開く。
すると母は真っ直ぐに俺を見て
「なんで、なんであんたはそんなに平気なの!」と泣きながら怒ってきた。
俺はそれにも吃驚して黙るしか出来なかった。
そんな俺に構わず母は続けた。
「なんであんたが、そんな…っ 治らないなんて……、それにもう2年保つかだなんて……っ」
俺は取り乱す母に驚きを隠せなかった。
自分の余命を聞かされた時よりも驚いている。
(この人でもこんなに感情的になることがあるんだな)
妙に感心してしまって、思わず声に出た。
「母さんでも、泣いたりするんだな」
それを聞いた母は、バッとこちらを見て立ち上がった。
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