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第1話 DKとインキュバス・7
「だからいい匂いがするほたるの傍にいれば、たくさん種も集まるかなって……」
「ふうん。俺に被害が及ばないなら勝手にすればいいけど、……で、お前の本当の姿はどれなんだ。その格好じゃ種も取れないだろ」
「元の姿に戻っていいの?」
「戻ってみろ」
ん! とマカロが拳を握り、身を屈める。一瞬の煙がその体を包み込んだかと思ったら、現れたのは──さっきと同じ青年の姿だった。見た目は俺より少し年上で、よく見れば男前でもある。
「それが本当の姿か」
「ああ。俺達は何にでも姿を変えられるが、極端に力を消耗したり精神的に動揺すると、ガキの姿になるのさ」
「じゃあさっきは俺にすごまれて動揺したってことか」
「そ、それは……!」
ともあれ気は弱そうだし、俺でもどうにかなる相手だというのは確かだ。退屈もしなそうだし、俺を追い回す連中に仕返しが出来るかもしれないと思えば──傍に置いておいても損はない、かもしれない。
「よし。マカ、お前が俺の傍にいることを許可する」
「ほ、ほんとか?」
「ああ、ただし俺の種はやらない。その代わり寝床は用意してやるし、俺に迷惑をかける奴らの種は幾らでも取っていい」
「わ、分かった。炎樽に迷惑をかける奴らの種は……」
復唱するマカロに何となく肩の力が抜け、俺は彼に向かって右手を差し出した。
「改めて、比良坂炎樽だ。よろしくな、マカ」
「ああ。俺はマカじゃなくてマカロ」
「マカの方が精力増強って感じがしていいだろ?」
しっかりと握手を交わし、俺達は互いに悪戯っぽい笑みを浮かべた。
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