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第2話 男子高校生のフラグ

 ……重い。  五月の爽やかな朝にしては、暑苦しい。 「………」  ベッドの上で目覚めた俺を抱きしめていたのは天和だった。俺の頭を自分の胸へ沈めるような形で、ぴったりと俺を自分に密着させている。 「う……」  俺の股間にはマカロが顔を埋めていた。寝ているのに幸せそうな顔で、スエット越しにもふもふと俺のそこに頬擦りしている。 「何やってんだよ、マカ!」  子供の姿ならまだ許していたかもしれないが、今朝のマカロは一晩休んですっかり元の大きさに戻っている。俺はその肩に蹴りを入れて股間からマカロを引き剥がし、ついでに天和の腕を解いて身を起こした。  そうだ。昨日は天和のアパートに泊まったんだっけ。  変なことはされていないようだけど、まさか天和が俺の味方になると思っていなかった分、何だか不思議な気分だ。 「んん、炎樽おはよ……」  蹴られた拍子に目を覚ましたマカロが、頭をかきながらベッドに手を付き上体を起こした。ギシ、とマットレスが音を立てて揺れる。大の男三人で寝られるほど広いベッドではないのだ。 「腹減った、炎樽」 「天和に言えよ……こいつの家なんだから」 「天和、起きろ。腹減ったよ」  マカロに肩を揺すられた天和が寝返りをうち、ぼんやりと細く目を開いて俺を見た。 「炎樽……?」 「マカが腹減ったって。米とかあるならおにぎりでも作るけど」 「炎樽──」 「わっ!」  勢い良く全身で抱きつかれ、俺の体が再びベッドに倒される。寝ぼけているのか天和が半開きの目で薄く笑いながら、俺のシャツを大きく捲って乳首に吸い付いてきた。 「ちょ、ちょっと、何すんだよ変態! やめろっ!」 「昨日は乳首吸えなかったからな」 「吸わなくていいっ……あっ、やだやだ、やめろっ……!」  デカい図体で真上から覆い被さり、赤ん坊以上の貪欲さで俺の乳首を啄む天和。時折舌で転がされ、軽く歯を立てられ、未知の刺激に意識せず声が弾けてしまう。 「やっ、──や、やだ……! たか、とも……いい加減にっ……」 「すげえ硬くしてんじゃねえかよ、どっちも」 「馬鹿あぁッ!」  涙目で天和を睨むと、その肩越しからこちらを覗き込んでいるマカロと目が合った。だらしない口元からは涎が垂れている。 「はあぁ、炎樽また良い匂いがしてきた……」 「み、見るなっ……嗅ぐなっ! 助けろ、マカ!」  胸元から顔を上げた天和が俺の耳に低く囁く。 「どうせ朝勃ちしてんだろ、炎樽。お互い一発抜いてもうひと眠りしようぜ」 「お、お前の常識に巻き込むなっ!」 「っ……、……!」  思い切り頭を振って天和の鼻先に頭突きを喰らわせると、声にならない叫びと共に天和が横に転がりベッドから落下した。 「いってぇ! このガキ、何すんだてめぇ!」 「こっちの台詞だ!」  朝から怒鳴り合う俺達を眺めていたマカロが、「腹減った」と泣きそうな顔で訴える。

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