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第2話 男子高校生のフラグ・11

「うっ……」  心の中で息を飲み、顔面を引きつらせる。鍵が閉められた個室の中では既に天和が自身のそれを抜き、片手で扱き始めていた。何というシロモノ……。本当に高校生か、こいつ。 「………」  透明でも物に触れることはできる。俺は恐る恐る右手を伸ばし、なるべく見ないようにして天和のそれを握った。 「っ……、ん……?」  すぐに違和感に気付いた天和が手の動きを止め、個室内を見回す。 「な、んだ……。誰か俺のチンポ触ってやがる」  熱く屹立したソレは俺の片手じゃ収まらないほどの大きさだ。確かにこんなモノを持っていたら、ビッチな後輩も放っておかないだろう。  さっさとイかせないと、透明化の終了時間が迫っている。 「う、おっ……! 何なんだ、一体……!」  両手で握って前後に扱く度、天和が腰を引いて声を上げる。その反応が面白くてつい手に力を込めてしまい、更に天和が体をビクつかせた。 「てめぇ、誰だか知らねえが勝手に人のモン扱いてんじゃねえぞ……!」  野性的というか鬼のような勘で見えない何者かの存在を嗅ぎつけたのか、天和が握った拳で宙を殴った。その攻撃が俺のこめかみ僅か数ミリ横をかすめ、一瞬の放心の後、俺の全身からどっと汗が噴き出す。 「………」 「そこか。いま拳に熱が触れたぞ」  ──何つう奴だ。拳に感じた気配だけで見えない敵の居場所を突き止めるとは。何より「見えない」ってところに疑問を持たない時点で色々おかしい。 「ぶっ殺す!」 「うわっ、わ、ちょっと待って天和! 俺だよ、炎樽……!」 「あ、……?」  振り被った腕をピタリと止めて、天和が目を瞬かせる。 「炎樽……? どこにいんだお前、どういうことだ」 「マカの薬で透明になってるだけだ。三年の校舎入るのにこの姿なら安全だからって……そしたらお前がいきなりトイレで……だから手伝ってやれってマカに言われて……」  一から丁寧に説明すると、天和が視線を動かして俺がどこにいるのか探り始めた。獲物を探す鬼の目だ。……ここは大人しく去っておいた方が身のためかもしれない。 「………」  天和に視線を合わせたまま一歩ずつ横に移動し、トイレのドアに手をかける。ダッシュで廊下に逃げてしまえば幾ら天和といえど、姿の見えない俺を追っては来られないだろう。  ──今だ! 「逃がすかぁっ!」  俺がそうすることを読んでいたとしか思えないタイミングで、天和が的確に俺の手を掴んだ。 「い、痛い! 痛いって!」  そのままの勢いで体ごと個室の中へと引き戻され、バランスを崩して尻もちをついてしまう──すなわち蓋の閉まった便座の上に腰を下ろす形となり、目の前には屹立したソレを露出したままの天和(怒りバージョン)がいて……。 「………」  詰んだ。

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