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第7話 体育祭バーニング!・6

「俺、逃げてばっかりいないで、もう少しやり返せるようになった方がいいのかな」 「必要ねえ。下手に立ち向かって危険な目に遭うよりは逃げた方がましだ」  俺の分がなくなる勢いで、天和とマカロがおにぎりを平らげて行く。唐揚げもリンゴもあっという間にはけてしまい、俺は残った昆布のおにぎりを齧りながら膝を抱えた。 「でも、守ってもらってばっかりで……。天和やマカがいなかったら、俺、何もできない」 「おれはずっといるから大丈夫だぞ、ほたる!」 「辛気臭せぇ顔すんな。あいつらは二度とお前に近寄らせねえよ、安心しろ」 「………」  マカロが嫌がるから塩は振っていないのに、おにぎりがしょっぱい。 「炎樽……」  涙が止まらなくて。二人の前で泣きたくなんかないのに、どうしても涙が止まらなくて。  自分の弱さが許せないのと同時に、こんな俺を大事に思ってくれている二人の気持ちが嬉しくて、俺は抱えた膝に顔を伏せて泣いた。 「ほたる、泣かないで……」  おろおろしながらマカロが俺の頭に乗り、その小さな手で必死に俺の頭を撫でる。 「ご、ごめんマカ、大丈夫だ、ありがとう。ごめんな」 「炎樽」  すると今度は天和の手が伸びてきて、俺の顎に触れた。 「っ、……」  上を向かされ、唇が触れる。 「………」 「……お前は俺が惚れた男だ」  軽いキスの後で、天和が笑った。 「そのままのお前でいてくれればいい」 「天和、……」 「生活指導の先生~。ここで隠れてチューしてる生徒がいますよ~」 「うわっ!」  突然頭上から降ってきた声に驚いて顔をあげると、そこには満面の笑みで俺達を見ているサバラがいた。 「ていうのは嘘! そこまで空気読めない男じゃないからね俺は」 「サバラ、……し、仕事はっ?」 「ひと段落ついたとこ。さっきはマカロが暴走モード入ってたみたいだから、大丈夫かなと思って様子見にきたんだけど」  サッと俺の髪に潜り込んだマカロだが、それよりも早くサバラに見つかったらしい。 「おいで。いきなりあんなに力使って、へろへろだろ。放っておいたらしばらく元の姿に戻れなくなるぞ」 「うう……。でおおれ、ほたる達といたい……」 「大丈夫だよ、マカのお陰で元気出たし。サバラの所で休ませてもらって、回復したら帰りにケーキ買ってやるから」  渋っていたマカロだが、やがて小さく頷いてサバラの肩へと移動した。 「それじゃ、後は若い二人でごゆっくり」 「何だこのジジイ」 「なっ、何だとは何だ! 俺は気を利かせて――」 「砂原先生ー、一年の子が具合悪いって」  生徒の声がして、サバラが天和を恨めし気に睨んでから踵を返した。 「具合悪いって、どんな? 一年生か、可愛い子?」 「さ、さあ……?」  サバラがアリーナの方へ戻った後で、俺と天和は少しだけ見つめ合い……お互い、照れ臭くなって笑った。

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