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第7話 体育祭バーニング!・9
「カッコ良かったぞ、天和! めちゃくちゃカッコ良かった!」
その日の帰り道。マカロはまだ興奮していて、天和の頭の上で飛び回っている。最後のリレーで俺が三人抜きしたことに関しては「炎樽、早かった!」の一言で済ませたというのに。
「天和、青いハチマキ持って帰ってきたか? もらってもいいか?」
「ああ」
今日一日天和が使っていたハチマキを体に巻きながら、マカロが「これで俺も強くなれるかな」と笑っている。
「マカ、すっかり天和のファンの一員だな」
呆れたように俺も笑うと、得意顔のマカロが宙返りをして叫んだ。
「俺が一番のファンだ!」
電車に乗り、空いている席に腰を下ろす。車内には他にも生徒達が乗っていたが、大半の生徒は体育館近くの繁華街へ向かったようだ。
「でも本当に凄かったって俺も思うよ。彰良先輩も強かったし惜しかったけど、天和は流石って感じだった」
「危なかったけどな。あんなにねばられると思ってなかった」
それから地元の駅で降りた俺はマカロと約束していた通りケーキ屋に寄って、ホールのショートケーキを注文した。
「こ、これ全部俺のかっ?」
「いや違うけど……マカも頑張ったから、半分は食っていいよ」
「やった!」
「天和はどうする? ……俺んちで夕飯とか、どうかなって」
「……どうすっかな」
迷われると思っていなかっただけに、少し落胆してしまった。俺から天和を家に誘うということは、「そういう意味」も含まれているのに。
俺とマカロを守ってくれた天和。俺のおにぎりを食べてくれた天和。あんなに大勢の生徒達を感動させてくれた天和──。
……今日なら抱かれてもいいって、思ったのになぁ。鈍い奴。
しゅんとなる俺を見て、天和が笑った。
「何落ち込んでんだ」
「べ、別に落ち込んでねえよ」
「言っとくが今日お前の家に行ったら、我慢できる自信ねえぞ」
「………」
ケーキの箱を持ったまま、俺は唇を噛んで俯いた。
そして──
「俺も、……」
「………」
「俺も多分、我慢できない」
ハチマキに身を包んだマカロが、隙間から目だけを出して「ひゃあ!」と漏らした。
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