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第7話 体育祭バーニング!・10

「ご馳走様でした!」  夕飯に買った弁当とケーキを勢いよく平らげたマカロが、パーカを着て玄関へ向かう。 「マカ、どこ行くんだ?」  慌ててその後を追うと、マカロがスニーカーを履きながら「サバラんち」と当然のように返してきた。 「天和、泊まってくんだろ。邪魔しないように俺は出てくよ」 「なっ、……ていうか、別に……ほら。そうなったらなったで、マカも種取れる訳だし……」  自分で言って恥ずかしくなったが、今夜天和に抱かれる覚悟はできている。マカロが気を遣うのも無理はない。 「初夜の種はめちゃくちゃ魅力的だけど、俺、二人に集中してもらいたいからさ。ここは空気読んで我慢して、次から種もらうことにした!」 「マカ……」 「頑張れよ、炎樽」 「……ありがとう、マカ」  玄関のドアが閉まり、俺はその場で一つ深呼吸をした。  今日、俺は天和に抱かれる。  天和とセックスする。  自分の覚悟と、マカロの思いやりと、天和の気持ちに──応えたい。 「お、……どうした。チビは出掛けたのか?」 「サバラの家に行くって」 「一丁前に気利かせてんのか」  ソファでテレビを見ていた天和が、立ち上がってテレビを消す。しん、と静まり返ったリビングの中央で、俺と天和は向かい合って視線を合わせた。 「そんな硬くなるな」 「だ、だって……あ、そうだ。風呂沸かして、どうせなら一緒に……」 「要らねえ、後でいい」  伸ばされた天和の手が、俺の腰を絡め取った。 「でも俺、今日いっぱい汗かいたし……」 「言ったろうがよ、我慢できねえって」 「あ、……」  立ったまま唇を塞がれ、優しく抱きしめられる。俺もぎこちなく天和の背中に腕を回し、その逞しい体をめいっぱいに抱きしめた。 「……汗臭せぇか?」 「ううん、……いい匂い」  天和の手が部屋着のハーフパンツの中へと滑り、下着越しに俺の尻を掴む。──そこで俺は、ある重大な事実を思い出した。 「す、すとっぷ」 「あ?」 「ちょっと一旦、着替えさせて!」 「もう着替えてるだろ」 「違うっ、えっと、その……パンツを替えてきたいっていうか、その……そうだ、勝負下着っての、穿こうかなって、……」 「何言ってんだお前」  もちろんそんな物は持っていないけど、尻にクマのプリントが付いた男児用パンツを見られる訳にはいかない。マカロがくれた夢魔印のパンツだと説明すれば分かってくれるだろうけど、だからってこんな大事な時にそんなパンツで挑みたくない。 「気にすんなよそんなモン、どうせ脱がすんだし」 「い、いやいや。結構重要だろ、こういうのって。雰囲気も出るし、パンツがダサくてフラれるとか雑誌に書いてあったし、……」 「炎樽、お前何か隠してるだろ」 「かっ……隠してないけど! マジで一旦、着替えさせてってば! 何なら全裸で登場してやるから!」 「………」  訝しむように天和の目が細くなる。そして── 「っ、……ああああ!」  一気にハーフパンツを下ろされた。

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